四十四話:選択肢
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仮面を着けて。
「聖夜に私は再び眠りから目覚めた。世界を、全てを壊すためにな」
「そんなの……あんまりだよ。望んでいないのに……」
「闇の書としての私には破壊以外の機能は存在していなかったからな。しかし、それもまた切嗣達の計画通りだった」
闇の書を主と共に永久凍結する。それこそが闇の書の呪いを永久に断つ方法だった。その為に衛宮切嗣という男は八神はやての養父となった。彼女と過ごした5年間の全ては監視の為であり、最後の最後で裏切り封印を確実にするための布石でしかなかった。……否、そうであればどれほど楽であっただろうか。
「切嗣の目的は怪しまれることなく騎士達の監視をすることと、主を絶望に落とし最後の覚醒を促すこと。父親になったのはそれが目的だ」
「酷い…酷いよ。どうしてそんなに酷いことを……」
「世界を守るためだ。私が主の下に来たことで主は幾多の世界を破壊する爆弾と化してしまった。それを防ぐために……主ごと私を封印するしかなかったのだ」
少女一人の犠牲で世界が救われる。少女を助けるならば世界は滅びる。理性的に考えれば簡単な選択だろう。一人の為に世界を犠牲にするなど傲慢にも程がある。だから正義の味方は大勢を救うために少女とその家族を犠牲にした。
だが、奇跡が起きた。死ぬべき運命にある者達が救われたのだ。悠久の時を眠るはずだった氷は溶かされた。他ならぬ、それを行った正義の味方の涙によって。
「あいつは全てが終わった後、家族を愛していたと……泣き叫んでいた。皮肉にもそれがきっかけになり主は救われた。感情を捨てた機械になることができないのなら正義の味方になどならなければよかったものを……」
最後の最後で愛を見せたことが奇跡を引き起こした。奇跡を誰よりも否定しながら自分自身で奇跡を起こしてしまった。それがどれほどの裏切り行為かは彼にしかわからない。
「結果として私も主も守護騎士達も皆が救われた。最高の結果だが、それが切嗣の今までの人生全てを否定するきっかけになった」
「最高の結果なのに……どうして? また一緒に暮らせばいいのに」
「平和を守るために今まで数え切れない人間を殺してきた。それなのに一切の犠牲は必要なく全てを救える選択があったと言われてお前は正気を保てるか?」
真っすぐな瞳に射抜かれスバルは何も答えられなくなる。己の行いを間違いだと突き付けられる。それも自分が起こした結果に。考えるだけで狂ってしまいそうになる。信じた正義はただの悪逆で、救ったと言える者達ですらただの被害者に過ぎない。間違えた理由は簡単、彼が正義の味方であろうとしたからだ。
「正義という集団秩序を善しとしておきながら、切嗣は弱者の味方でありたかった。その矛盾をあの日に見せつけられた。お前も非情になりきれないのなら、正
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