第3章 リーザス陥落
第88話 奥義
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「勝っても負けても……」
「ああ。戦争ではある、が。……個人的にオレ達に遺恨の類は 更々無い」
再び間合いを取った両雄が向き合う。
トーマは、地に落とした戦鎚を手に、ユーリも鞘に収めた剣の柄を握り、――……其々の得物をその手に携え 最大の攻撃に備えて構えた。
ユーリは、低く そして やや前屈みで 己の持つ剣。
妃円の剣を納刀した状態で 剣の鞘を握り締めていた。その構えは言わずもがな、《抜刀術の構え》である。通常よりも やや、前傾姿勢を取っているのは、剣速を重視しているのだろう。この豪傑相手に、覚醒した相手に 今まで使ってきた戦術。
即ち、リックや清十郎も言っていた様に、ユーリは 正面からトーマの力を叩き伏せていた訳ではない。最速で、鋭角的に同じ力で迎え撃つ。相手の力が最大限に発揮する前に、弾き返す。
確かにそれが、出来た――が、今のトーマ相手には心許なさすぎる。
望んでいた展開であるとは言え、トーマとの完全なる正面衝突、つまり、力と力の勝負では分が悪すぎる。それを全て判った上で、ユーリが選んだのはこの選択だ。
――必殺の一撃を、最速で入れる。
ハンティの時同様、それが、現在の自分自身のレベルで勝負出来る唯一の手段なのだ。
トーマは、その手に持つ戦鎚グラ・ニュゲト。
人間の頭よりも遥かに大きい、二連鉄球を掲げる様に、構えている。そして、腰に差しているのはひと振りの刀。それでも、その巨体に合わせているのだろう。その刀身はユーリの身体よりも大きい。JAPANで作製された刀《黒鬼》。
その名は持ち主の通り。鬼神の如き強さの黒騎士。まさに トーマに使われる為に、トーマを主とする為に、この世に生を受けた刀だ。どちらを使っても同等。最早、一撃必殺の威力を持つ凶悪な兵器だ。
切り裂くのではなく。
―― 一撃必殺。渾身の力で、叩き潰す。
つまり、戦鎚での一撃を回避されたとしても、刀による攻撃にも移ることが出来る体勢だった。
そして、互いが同様に、覚悟を決めた。
「………これが、儂らの最初で、――最後の戦いだ」
「は……っ。トーマ。お前程の腕の者はそうそういるものじゃないんだ。……オレとしては、手合わせ願うのが最後とは思いたくはないがな。これで最後じゃ仲間達に、清とリックに色々と嫉妬されそうだ」
「この儂を相手取り、言いよるわ。こわっぱ……いや、ユーリよ」
トーマは、大きくその戦鎚を振り上げ、静止。――完全に構えた。
ユーリも前傾姿勢、大地をしっかりと踏みしめて、構えた。
「もう、言葉はいらん。ただ……」
「……全力を尽くすのみ。互いに、な」
そして、もう宣言通り、言葉は両者には無かった。
その代わりに、2人の
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