第3章 リーザス陥落
第88話 奥義
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る一撃を受けて、意識があると言うのだから。
トーマ自身は、殆ど動かせない身体だったが、視線と僅かに動く首で、自身の傷を確認した。
「……これは、峰打ち。か。手を抜いて尚、これでは 儂も隠居しなければならん、か」
トーマは、そう呟く。
その言葉の中には、笑みも浮かんでいた。負けた事実は間違いないものの、何処か満足、と言う面が大きかったのだろう。
「馬鹿、言うな。……刃側だろうが、峰側だろうが、これは、これだけ集中させた居合は 関係ない、さ。 そう、これは《奥義》。……持てる力の全てを集中、させたんだからな。……命を奪うまではやりたくないと言う本心はあった、が。……その驕りを持ったままだったら、オレが死ぬと思ったんで、な」
ユーリは、志津香に支えられたまま、そう言っていた。
「トーマ、最初に言った通りだ。真の敵、とは思えない。それに――お前には…… まだ、やってもらわなければならない事がある、だろ。 なのにここで、お前を死に逃がすわけには、いかん。……オレがお前をぶん殴ったんだ。……次は、お前にヘルマンの馬鹿皇子の横っ面をぶん殴って貰う。それ、までは……。自分の尻は、自分で拭け。それが、当然だ。男と、して」
クルックーに治療を受けたユーリは、ゆっくりと立ち上がった。まだ節々は痛むものの、クルックーが頑張ってくれたお陰だった。そして、リックの方を見る。
「……リック。一騎打ちの勝者、生殺与奪はオレにありだ。今、トーマを殺すのは、許さん。罰するのも……、待ってくれ。……この男には、してもらわなければならない事がある。……リーザスの、ひいては人類の為だ」
「みなまで言わないで下さい。……それに、トーマ将軍は、例え敵であったとして、敬意を示すべき軍人です。私は今、以前より増して、尊敬すらしています。……軍人としては、従うわけにはいかない、それが正解なのでしょう。――それでも、私は私の心に従います。そう、――ユーリ殿に従います」
ユーリはそれを訊いて、頷くと笑った。リックに感謝をして。
リックはそう言うと、ゆっくりとトーマに近づき、そして 腰を下ろした。
「……私も、貴方とは決着をつけたかった」
「あの時の事は、詫びよう……。リーザスの、若き将、―――死神よ……」
ゆっくりと、トーマはリックの方へと視線を向けて、目を瞑った。
確かに死ぬつもりはなさそうだ。
まるで、ユーリの剣が、トーマに活力を与えたかのように。
命を奪うのではなく、与える。それはまさに活人剣と言えるだろう。
「ふ……。完治したら、オレも手合わせ願いたいものだ。―――トーマ・リプトン」
「―――本当に、育ってきておるな。次世代達が……」
清十郎の顔も見て、トーマは、また満足
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