第3章 リーザス陥落
第88話 奥義
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体が完全に地に倒れ伏す前に、志津香がその胸に受け止めた。ユーリの身体の重さと、滑り込む様にユーリと地面の間に入った為、志津香とユーリの2人は共に倒れ込んだ。
「………わる、い。しづか。 ……もう、うごけないみたい、だ。まえと、おなじになって―――すまん、な」
息も荒く、所々に決して浅くはない傷が無数に出来ていた。これ程までの傷を負って尚動ける方がおかしいと言えるだろう。
「馬鹿。……もう。また、無茶、して………」
志津香の目から、涙がこぼれ落ちた。
無事だった事が何よりも嬉しかった。
本当は、志津香も戦いに加わる。例え、あの男には通じなくても、目晦まし程度にはなるかもしれない、とユーリを助ける為に攻撃をしたかった。
だが、ユーリのあの時の迫力を受け、言葉を受けて、……出来なかった。
『これ以上手を出すな!!!!!』
この拓けた戦場の隅々にまで響き渡る咆哮だった。喧騒漂う戦場で、皆が命賭して戦い続けていたのにも関わらず、全員が手を、足を止めたのだ。
そのユーリの意図を理解したのは、戦いを辞めて、トーマと話した時だった。ユーリは、トーマは敵だというのに その武人としての心の内を、誤ちの全てを見逃さなかった。あろうことか、全開のトーマをも引き出してしまった。……心に隙があるのであれば、そのまま 倒せばよかった筈なのに。
でも、ユーリにはそんな事ができない事は、志津香には解っていた。そして、人間を誰よりも《見ている》からこそ、決して見逃さなかったと言う事も……。
だけど、判っていても。――命だけは、ユーリの命だけはやらない。例え一騎打ちであったとしても、絶対にやらない。……例えその結果、ユーリ本人に恨まれる結果となっても、志津香は乱入していた筈だ。自分の命を捨てる覚悟で。
だからこそ、ユーリが勝ってくれて、本当に嬉しかったのかもしれない。生きていてくれて、そして 想いを遂げる事が出来て。
そして、リーザス軍達は 皆が驚愕をしていた。
人類最強と言う肩書きは決して伊達ではない。これまでの幾千の戦を重ね、そう称される様になったヘルマンの《トーマ》
そのトーマを正面から 打ち負かしたのだ。……あろう事か、介入不可 1対1の一騎打ちで。
リックは、いや、全兵士達がその光景を、歴史的瞬間を目の当たりにし、自分はとてつもなく軍人として、武人として幸せを感じていた。
……そして、時代の流れを、まさに今、感じていたのだ。
「あぅ……、志津香さん、羨ましすぎですかねー。これがほんとの約得、ですかねー……、王道過ぎですかねー……」
「……はは。ちげえねえ。だけど、今回は志津香の勝ちだぜ? トマト。……あんな戦闘の中にでも、躊躇なんか
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