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ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第88話 奥義
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そうに笑顔を向けていた。

 そんなトーマの後ろで、控えているのはヘルマンの騎士達だ。
 これまでの下衆の様な兵士達じゃない。本当の誇りを持ったヘルマンの黒鎧騎士(ブラックナイツ)達。
 そして、一歩前に出たのは大隊長、トーマの片腕のガイヤス。

「トーマ……様」
「……ふふ、儂の負け、じゃ。これ以上応戦はするな………。例え、儂が死んでも、するな。――これは、命令だ」

 トーマの声は決して大きくない。
 だが、それでも地の底から、響く様に……、兵士たち全員の身体の中に響いていた。

「――当然です。我々は、負けました。……無粋な真似をして、この勝負を汚す訳には行きません。いえ、将軍を――。そして、リーザスの志士達を」

 ガイヤスがそう宣言するすると同時に、各々の武器、剣や槍、弓矢――杖に至るまで、全ての武器を放棄した。応戦の意思を、完全に排除。非武装になったのだ。

「――命賭して、戦った者達に……敬礼!!」

 ガイヤスの号令があった後。
 一糸乱れず、全員が敬礼体勢になった。直立不動の体勢のヘルマン軍 約100名。

 その姿を見て、目を丸くするのはリーザス側だったが、気持ちは同じだった。やや、遅れてリックを中心に、敬礼をしていた。


「……本当に違う、わね……、今までのヘルマン軍とはまるで」

 志津香は、ヘルマン軍の姿を見て、これまでの光景が目に浮かぶのにも関わらず、ヘルマンに対する印象が薄れていくのを感じていた。
 自身の故郷を踏み躙られ、親友を、友人を汚そうとして、……他にも沢山非道な真似をしてきた筈の軍隊だったのにも関わらずだ。

 ユーリの気持ちが、本当に判ってきた気がしたのだった。

「――今後の事は、バレス将軍やランスどのを交えて、話す事にしましょう。……彼らはもう、敵ではない」

 リックはそう呟く。
 通常であれば、敵側に屈する。いや、謀反を企てる等とは言語道断ではある。……だが、ユーリの言葉を訊いて、何も感じない程、薄情でも無脳でもない。

「……儂も、しなければならない事がある。――伝えなければならない事がある。――教えなければならない事がある。……その為にも、まだ……生きる」

 大の字で倒れ伏しているトーマだったが、確かにそう言った。

 何をするつもりか……、細かくは言ってはいないが、皆には通じた。――責任を果たすつもりだと言う事が判った。

「――だが共に行く訳にはいかん。それでも、良いか? ユーリ」
「ああ。……問題ない。トーマ。寝返れとは言わない。――軍人としての誇りを踏み躙る事はしない。だが、横っ面はぶん殴ってやれ。それが条件だ」
「ふ――。かたじけない」



 
 そして――、間違いなく歴史に刻まれるであろう
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