第3章 リーザス陥落
第88話 奥義
[2/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
間には、いや 周囲には風が巻き起こった。
まるで、2人の気迫に圧されているかの様に、だ。そして不自然に発生した風は、2人を避けて流れる。……これは、まるで2人を畏れているかの様だ。
周囲の者達は、誰も声を上げたりはしなかった。それはヘルマン側、リーザス側の両方だ。
心配で、心配で、……1人で人類最強と呼ばれるトーマと。チューリップ砲弾すら素手で弾き飛ばし、更には外した一撃は、岩をも砕き、その砕いた岩でさえ、武器に変える。つまり、受けても、外しても、ダメだと言う事だ。
――人間じゃない。
と思わせるのには十分過ぎる程だった。正直、《一騎打ち》など、させたくなかった。1対1で、戦わせたりはしたくなかった者達も、まったくと言って良い程、言葉が出なかった。
この圧倒的な強者の間に流れる気迫と言う名の風は 辺りの者達から 《言葉》を奪い去った。のだ
そして、戦場に舞う一陣の風が、一本の木の枝をへし折った。
折れた枝が 地に触れたその瞬間、それが合図だった。
「ぬおおああアァァァァァ!!!」
まず 動いたのはトーマだった。
その巨体からは考えられない速度で動く。二連鉄球の戦鎚《グラ・ニュゲト》を振りかざし、ユーリに振り下ろそうとした。
『――――っ!!』
――全力全開、まさに全ての力を込めるトーマに対し、ユーリは、後の先、と言うべきカウンターを狙っている。
リック、清十郎はそう思った。彼らも、強者だからこそ、彼らの戦闘を眼で追う事が出来たのだ。
トーマがまず先に仕掛けた。……それは、間違いない筈だ。強大な攻撃故に、隙も大きい。だが、幾ら隙が大きい、とは言っても、常人とは比べ物にならない程のモノであり、その巨体からも考えられない程の速度。力はトーマ、速度はユーリと見ていたが、覆されかねないモノだった。
だが、勿論ユーリの動きも負けてはいない。
リックと清十郎は、トーマの速度を見た後、ユーリの速度を見た。――そして トーマの時同様、覆された気分だった。
ユーリの攻撃速度、そしてその剣速は まるで空間どころか、次元を超越したかの様な速度だったのだ。
先に攻撃を仕掛けたのはトーマなのは違いない。あの二連鉄球グラ・ニュゲトを先に振り上げて、そして 振り下ろすよりも早く、トーマの懐に接近をしていたのだ。
それは、瞬きすら許されない刹那の刻だった。
そして、次は時の矛盾が起こる事になる。
瞬きすら許されない一瞬の刻の狭間だったのは、攻撃を仕掛けているトーマも同様だったのだが……、そんな刹那の隙間だったのにも関わらず――彼は、考える事が出来たのだ。
「(……そう、ユーリよ。お主程の動
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ