プロローグ 平和な日常
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香は興味が無いので知らないが、ユーザーは頭から顔まですっぽりと覆った流線型のヘッドギアである〈ナーブギア〉を使い、電気信号が脳そのものと直接接続することによって五感のすべてにアクセスされる。
それにより仮想世界に本当の自分の体があるように体感することが出来る、というシステムのようだ。
このゲームハードが発売されたのは2022年の五月。今から半年ほど前。
ナーブギアは本当の仮想世界を作る。
そのうたい文句で多くのネットゲーマーを魅了したこのシステムであるが、マシンが発売された当初はソフトの方がしょぼいものしかなかったらしい。
クラスの男子がぼやいていたのを覚えている。
そして,数ヶ月後,多くのネットゲーマーからの期待と渇望の高まりから、発表されたゲームの名前がこの〈ソードアートオンライン〉。
茅場昭彦。
その男の名前も多くのものに知られている。
若き天才ゲームクリエイターにして量子物理学者。
彼が弱小ゲーム会社の1つであったアーガスを最大手とまで成長させた男であり、それは同時にこの男が〈ソードアートオンライン〉を作ったことを意味する。
〈ソードアートオンライン〉はゲームの舞台である、百層に及ぶ巨大な浮遊上の上で、ファンタジーMMOでは必須と思われた〈魔法〉の要素を大胆にも排除して、その代わりに武器ごとに無数に設定されている〈ソードスキル〉を使い、モンスターを倒して頂上である第100層を目指すものだ。
さらに、お金を貯めて家を買い、料理や裁縫、釣りなどのスキルを取れば、そこで生活をする事さえ可能であるらしい。
多くの関心が寄せられているゲームであることは知っていた。
父親がゲームの内容を少し悔しそうに(茅場昭彦をレクトに引き入れることができなかったらしい)しゃべっていたのは,ほんの数週間前だ。
だが自分たち兄弟はゲームとは無縁の生活を送っていたので、浩一郎がこのゲームを買ったことに明日香は内心結構驚いていた。
浩一郎の話は愚痴だった。
苦労して手に入れた〈ソードアートオンライン〉の正式サービスが始まる日に浩一郎は海外に出張に行かなくてはならなくなったらしい。
そして正式サービスの始まる前日にその文句を言っていたのだ。
ソードアートオンラインは正式サービスをたったの一万人限定で行うので、入手するのに苦労したそうだ。
冗談めかしたように言っていたが、その実本気で残念そうにしていたことを明日香は覚えている。
明日香はその話に適当に相づちを打つだけだった。今までもゲームとは無縁の生活をしてきたのだ。高校受験が迫っているこの時期に自分が興味を持つ理由も動機もなかった。
そう。ないはずだったのだ。
なのに次の日、明日香の足は自然と浩一郎の部屋へと向かっていた。
どうしても
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