第5話、金と銀の亡命者
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りました。彼女が客間に案内してくれるでしょう。小官は着替えてまいります」
豪華な調度品に囲まれた客間で、ラデツキーは五分ほどロイエンタールを待った。
その間、いくつかの考えがラデツキーの内心で渦巻いた。軍を追い出されても、ロイエンタールのプレイボーイ具合なら、女性を手玉に取って自由惑星同盟の政界を席巻することも可能かもしれない。
そもそも銃弾のとんでこないところで出世できる男に、わざわざ気分屋のホーランドの部下であるラデツキーの、そのまた部下になること求めること自体が、狂気の沙汰かもしれない。
「閣下、お待たせしました」
「う、うむ……」
不覚にも、ラデツキーは入室してきたロイエンタールの軍服姿に見惚れてしまった。水着姿より軍服姿の方が女性を魅了するかもしれない。
と同時に、こいつだけには、十歳になった愛娘を絶対に紹介してはならない、とラデツキーは心に深く刻みこむ。
それから愛妻を紹介して良いか悩んでいると、不審そうに自分を見つめるロイエンタールに気づいた。
「ロイエンタール提督はこちらの生活に慣れましたかな」
「はい。亡命で提督の地位こそ失いましたが素晴らしい新天地を得ました。それに、命の危険を冒さず為政者を好きなだけ批判できる社会は、意外に小官の性格に合っているみたいです」
ロイエンタールは提督と呼ばれることに若干違和感を感じているようだ。さり気なく自分がもう提督でないことをこちらに告げてきたが、ラデツキーは聞かなかったことにした。
「それは良かった。ですが自由と言っても、やはり社会の反発を買わない加減というものがあります。力を持つ人間がルールをねじ曲げることはどこも一緒であり、その機微に慣れるまでは慎重に行動していただきものです」
「……ご忠告傷み入ります、閣下」
「実はここに来る前、ミッターマイヤー提督とロイエンタール提督の調書を拝見致しました」
ラデツキーはロイエンタールの顔に一瞬浮かんだ警戒心を見逃さなかった。
「亡命した緊張のせいで、何か事実誤認でもしましたかな」
「事実誤認? 少なくとも私は非常に感銘は受けましたよ。特にイゼルローン要塞攻略案。数万隻の艦艇を数百隻の艦艇からなる集団に分け、少しずつ防備を剥いでいく案。あれは秀逸だと思います」
「恐れ入ります、閣下」
「しかし今のままでは机上の空論です。このような大胆かつ繊細な機動を取れる大艦隊は、銀河のどこにも存在しないでしょう。そして、そのような艦隊を作り上げること、ホーランド提督と私が目指しているものです」
「ホーランド提督ですと?」
「申し遅れましたが、私は第十一艦隊を指揮するホーランド提督の参謀長を拝命しています。今日はロイエンタール提督に私と共にホーランド提督を支えて貰いたいと伺った次第です」
「小官だけを勧誘するということですか
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