第二十七話 マクシミリアン・シンドローム
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
国は滅んでしまうぞ。何とかしなければ」
「甥の領地では平民どもが一家総出で逃げ出して、税の取立てに難儀しているそうな」
「まったく、甘やかすからこうなるのだ、見せしめに、二、三人殺せば平民どもも黙るだろう」
「おお、そろそろフィリップ3世陛下の突撃の場面だぞ」
「ああ、これを見ないと始まらないな」
演劇は佳境に入っていた。
彼らは先代のフィリップ3世の精神的後継者も名乗っていた。
『古き良きトリステイン国王と貴族』を体現した先王とそれに付き従う魔法衛士達の姿は、先王死後、十数年経った今でも色あせる事は無く、彼らの心の中に今だに生き続けていた。
演劇の題目になっている『ロレーヌ戦役』は2回あり、いずれも大勝利を収めたが、あくまで局地戦での勝利で、賠償金は取れず、戦後、財政を悪化させてしまった。1回目は宰相として辣腕を振るったエスターシュ大公の手腕で破綻は免れたものの、大公失脚後の2回目では財政破綻寸前の所を、後のクルデンホルフ大公が大量の持参金を持って支援し、その功績でクルデンホルフ大公国を誕生させてしまった。
何よりロレーヌ地方を完全に統一したわけではなく、帝政ゲルマニアは東ロレーヌを『ロートリンゲン』と呼称していて、数万の軍と空軍を駐留させ虎視眈々と西側の動向をを伺っていた。
一方トリステイン側も、統一をさせまいと少ない領地で孤軍奮闘していた『風の大家』のロレーヌ公爵に対し大幅に加増をしてゲルマニアに対抗していた。
マクシミリアンにとっては、祖父である英雄王フィリップ3世は、そのカリスマ性を含めても一定の評価はしていたが、クルデンホルフ大公国など多大な負債を後の世に残し、死んでも影響を与え続ける大変厄介な存在である事などから常々苦々しく思っていた。
『生者が死者に勝つには何をすればいいのだろう……』
というテーマが、最近のマクシミリアンの悩みだった。
……話を戻そう。
「さて……そこで、わしに良い考えがあるのだが……」
一人の老害がしたり顔で、周りの老害たちと顔を寄せ合った。
「実はな……数日後に城壁前の流民どもをマクシミリアン殿下自らが視察される」
「うん」
「そこで哀れなマクシミリアン殿下は、流民の中に紛れていた暴漢に襲われて重症を負われるのだ」
「おお!」
「重症の度合いにもよるが、何らかの形で廃嫡できれば、我々はアンリエッタ姫殿下を擁立して……」
「そこまでだ! マクシミリアン殿下襲撃の協議の現行犯で逮捕する!」
老害の陰謀は最後まで語られる事はなかった。
突如、来賓室のドアが破られ、10人ほどの男達が雪崩れ込んできて老害5人をあっという間に拘束した。
「何者だ! 我々を誰だと思っている
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ