第51話 江戸城無血開城
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江戸薩摩藩邸。
そこの二人の男が向かい合って座っていた。
一人は新政府軍の提督に就任した薩摩の西郷隆盛。そして、もう一人は旧幕府海軍提督・勝海舟。
西郷は腕を組み目を瞑り、勝は口を一文字にして西郷を見つめていた。
この会談は2度に渡って行われていた。
1度目は、勝にとっても、西郷にとっても挨拶変わり程度ではあったが、2度目の会見に勝は勝負をかけていた。
会見を長引かせれば新政府軍は江戸に総攻撃をかけてくるだろうと踏んでいたのだった。
「なぁ、西郷さん、どうしても江戸の総攻撃を取りやめてはくれないかね?」
先に口を開いたのは、勝のほうだった。西郷はいまだに同じ姿勢で聞いている。
実は西郷にも苦悩があった。
一つにはイギリスからの徳川温存の圧力、そして、もう一つは徳川滅ぼすべしと決起はやる板垣退助からの突き上げ。
その2つの間で板挟みにあっていたのだ。
イギリスの力は脅威である。かつて、薩摩はイギリスと戦い、敗れ去った痛い経験がある。
かの「薩英戦争」だ。
かといって、新政府にとって徳川は目の上のたんこぶにもなりかねない。故に、板垣たちがいう徳川滅ぼすべしという声もわからないわけでもない。
「西郷さん、江戸を、京や大阪のように街を火の海にしたいのかい?そんな事をしたらどれだけの人が路頭に迷うかわかるかい?」
勝は必死に西郷の心に響くように問いかけた。
実は土方軍に近藤危うしの情報を流したのは、勝だった。
もし、土方軍が江戸にいたとあれば、新政府軍との激突は避ける事は出来ない。そうなれば、江戸は火の海になり、多くの犠牲者がでると判断した。
「なぁ、西郷さん。貴方ほど頭のいい人なら、わかるだろう?もし、江戸が、ここで壊滅したとしたら、日本はまた諸外国に遅れをとってしまう。それに、江戸を焼けば、今度は庶民の怒りが新政府へ向くぜ。そうなれば、この戦いは泥沼だ。最悪、諸外国の植民地に成り下がってしまう事になりかねない。そうなれば、日本はもう終わりだ。徳川だの新政府だのっと言っていられなくなっちまうだぜ」
勝の言葉に西郷はうーんっと一つ唸りを上げたたけだった。
「もしや、徳川が新政府に口を出すのでは?と思ってるのかい?そんなことはさせやしねぇよ。この勝が約束しようじゃないか」
勝はにこりと微笑んだ。その言葉にようやく西郷はゆっくりと目を見開いて勝を見据えた。
「その証拠として、江戸城を明け渡そう。それで、納得してくれるかい?」
「わかりもうした」
西郷は一言それだけ言うと勝に手を出した。
「ありがとう、西郷さん。後はこの勝が悪者になってやるよ」
勝は大声で笑った。
「勝先生、お互い損な役まりでごわすなぁ」
「ちげぇねぃや」
お互い顔を見合わせて豪快に笑った。
「待たれよ
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