第百六話
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こちらの負けだ。
「…………」
仕方なしに。クナイを日本刀《銀ノ月》の柄で受け止めると、その勢いを失ったことを確認してポケットにしまい込む。もちろんもはや奇襲など出来るはずもなく、野太刀を油断なく構えたスメラギが、その表情に少し笑みを含めてこちらを見ていた。
「手癖が悪くてな」
「直すことをオススメする……!」
素早く投げたクナイと大地に落ちたクナイの数を計算し、スメラギの『手癖の悪さ』とやらに奪われたクナイが、先の一つ以外ないことを確認し。今度はこちらから仕掛けんと、手は日本刀《銀ノ月》の柄を持ったまま、スメラギへと身を低くして疾走する。
「…………」
こちらが何をしようとしているのか、随分と警戒した様子でいて。俺を迎撃せんと野太刀を切り払うように薙ぐスメラギに対し、こちらも同じく日本刀《銀ノ月》を抜き放ち対抗する。
一合、二合と打ち合うものの、やはり単純な斬り合いではスメラギの方が優勢。その単純な重量という強さに押されていき、削りダメージがこちらのHPに蓄積していく。
「やっぱりダメか……」
スメラギに聞こえない程度に小さく呟きながら、俺はスメラギの剣戟の勢いを利用して後退する。追撃しようとしてくるスメラギを、足元のクナイを蹴ってそちらに飛ばす。足元から顔面に突如として放たれたクナイだったが、スメラギはあっさりと野太刀にて両断する。
「……そちらは足癖が悪いようだな」
「そうでもない」
戦いが長引けば長引くほど――スメラギにこちらの動きが読まれるようになるほど、ただただこちらが不利になるのみ。さらに言うならここで時間をかけてしまえば、この日の最後に行こうと思っているNPCレストランが閉店する。それはマズい――と考えると一息つき、日本刀《銀ノ月》を突きの体勢に移行する。
「……ナイスな試し斬りの相手に、なってもらおうじゃないか……!」
自らを鼓舞する言葉とともに、突きの体勢のままスメラギに疾走する。フェイントも何もない、ただ高速なだけの突きの一撃。スメラギの心臓を狙ったその一突きは、あっさりと野太刀の前に阻まれてしまう――
「――――!?」
――阻まれた、筈だった。いや、確かに最初の突きは切り払われ、俺はスメラギの前に大きな隙を晒した筈だった……が。事実スメラギの心臓には、彼の驚愕の表情とともに、再び日本刀《銀ノ月》の突きが迫っていた。
「ッ!」
それでもスメラギは二段目の突きに何とか対応してみせ、身体を無理やり横向きにすることで突きを避け、日本刀《銀ノ月》はスメラギの服を切り裂き空を突く。ここで日本刀《銀ノ月》を横に薙げばスメラギを腹から両断出来るだろうが、このタイミングではスメラギが野太刀を振り下ろす方が速い。しかしてスメ
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