第百六話
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大勢力となったギルド《シャムロック》の副リーダーであり、リアルでもセブン――七色の助手をしているという彼の姿。いつもの生真面目そうな仏頂面を見せているスメラギに対し、聞きにくかったことをズバリとリズが言ってのける。
「……彼らに礼のチケットを渡しに来たのだが」
仏頂面の中に疑問の感情が浮かんだスメラギの口から、フロアボス攻略戦を協同したお礼にセブンから貰った、VRライブのチケットのことが語られる。そう言えばあのフロアボス攻略戦には、クラインたちのギルド《風林火山》も参加していたな、と思い出して。……それを《風林火山》のメンバーに渡してきたスメラギは、タイミング悪くこの妙な出来事に巻き込まれたらしい。
とはいえ生憎と、レインや他のメンバーのように役者ではなかったようだが――
「だが、頼まれたからには全力を出そう」
そんな無駄な義務感を発したスメラギがメニューを操作すると、俺の目の前にシステムメッセージが表示された。スメラギからのデュエル申請――初撃決着モードのそれを、周囲のチンピラたちがはやしたてる。
「ショウキ……?」
心配したようなリズの声と視線を受けながら、俺はデュエル申請のメッセージに対して『OK』のボタンを押す。一瞬――俺もスメラギも纏う空気が一変し、この一定の空間のみ《圏内》は解除された。
「よろしく頼む」
「ああ。いい勝負をしよう」
リズがゆっくりと傍らから離れていき、《風林火山》のメンバーが周囲の他のプレイヤーに注意を促すと、デュエル用の一定の空間が作られる。見物客も含まれたその空間は、まるで武道場のようでもあった。
最大勢力となったギルド《シャムロック》の副リーダー。リーダーであるセブンは自身が弱いことを公表しているが、スメラギの方はフロアボス攻略戦の指揮を取る程に習熟している。最大勢力の代名詞をかっさらわれたサラマンダー領のように、カリスマや実務のリーダーに、最強の副リーダー――といったところか。
「…………」
デュエルが始まる前のカウントが発生し、スメラギが精錬な気を纏いながら得物たる野太刀を抜き放つ。最大勢力の最強のプレイヤー――その実力には興味があり、名ばかりではないことはその野太刀を見れば分かる。
何故ならあの野太刀はリズベット武具店で製作された、筋力値の関係で俺には振るえもしなかった、ステータスだけを見れば最強の日本刀。ふんだんに素材を使ったものの、プレイヤーに要求する能力やスキルが際物すぎたため、ショーケースの中でホコリを被っていた失敗作だ。
「抜かないのか?」
「ああ。このままでいい」
それをまるで、あの野太刀に合わせたスキル構成にしたように。使い手も含めて一本の刀のようになった業物に、制作者としては少し感慨
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