第百六話
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「やめなさい、この!」
「えへ、ごめんなさい。それでどうしたの? デート?」
リズの攻撃の手を軽い身のこなしで避けながら、レインはこちらに向かって話しかける。確かにデートと言われればデートだったが、色々な事情があって――と言おうとしたが、その前にレインが声を被らせてきた。
「私は素材集めに来たんだけど、周りが目に毒で。……ねぇショウキくん、一緒に行こうよ!」
周囲にもいる男女のペアをチラチラと見ながら、レインはこちらの手を掴んで引っ張り、密着状態にあったリズが離れた。突如として俺という支えを失ったリズが、少しだけ倒れそうになってしまいそうになっている間に、レインは強引に俺の片手を握ってきた。
「さ、行こ!」
レインらしくないそんな強引な展開に、俺は先程読んだ台本のことを思い出した。確か『ライバル登場』……とか何とか書かれていて、つまりレインはそういうことなのだろう。
「ちょ……ちょっと!」
リズはそれに気づいているのかいないのか、無理やりレインに繋がれていた俺の手を叩いた。強制的に分断された手を眺めながら、次の台詞はなんだったか――などと考えていると。
「おう何してくれてんだぁ!?」
などという場と雰囲気にそぐわない恫喝の声が響き、俺たちを五人ほどのサングラスをつけた集団が囲んだ。彼らは思い思いの武器を持ちながら、こちらを睨みつけるように威圧感を漂わせていた。
そんなステレオタイプなチンピラ集団……というか、あの浮遊城で幾つもの修羅場を共に乗り越えてきて、今はサラマンダーの妖精となった、刀使いで侍気取りの戦友にその仲間にしか見えないが。サングラス以外の変装をしないのは、むしろ潔く感じてしまう。
「パパ!」
「ウチの娘を傷物にしたんだ……覚悟はいいなぁこの野郎!」
涙目になったレインが――最も名演をしている女優は彼女だろう――そんなチンピラな皆様のリーダー格に走り寄っていき、リーダーは見覚えのある日本刀をこちらに見せつけてくる。その前にその手作りの《風林火山》と書かれたロゴをしまえ。あと手を叩かれたのは俺の手であって、演技で涙目のレインは完全にノーダメージだ。
「クライン。刀、随分傷ついてるぞ」
「やっちまってくだせぇ先生!」
どこかクエストでも言った帰りだったのか、クラインが構える刀の汚れをどうしても見過ごせず。次の台詞より先にそれを注意してしまうが、クラインは無視してさらに声をあげる。《風林火山》のメンバー――もといチンピラが位置をズラすと、雑踏の向こう側から新たな妖精が歩み寄ってきた。
腰に野太刀を帯びた長身のウンディーネの青年――
「……スメラギ?」
「何やってんのあんた」
――今やこのALOにおいて最
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