第百六話
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返す。いつものリズベット武具店で、お得意様のお相手をしていて――
「ありがとリズー……愛してるぜ!」
「はいはい、間に合ってるからさっさと行って来なさい。フカ」
Femaleでなければ夜道で俺の手が滑りそうな告白を語る、お得意様のシルフを適当に送り出していると、どうにも全力で走っているような音が聞こえてきた。急いでいるなら飛翔すればいいものを、とリズも同様のことを思ったらしく、二人で顔を見合わせて飛翔する。
「あの子、ああ見えて腕はたつのよ?」
「そうは見えない」
そんな何でもないようなことを話ながら、俺は武器を手入れしている手を止め、太陽のような笑顔で接客するリズを眺める。シャムロックや新生アインクラッドの新たな層の開放などの騒ぎで、少しは名の知れた鍛冶屋と自負しているこの店も、おかげさまで随分と賑わっていた。
……その分嬉しい悲鳴というものがあり、需要と供給や人手が足りなかったりすることもままある。今回もその時分に漏れないようで、武具のメンテナンスを何とか終わらせると、俺も接客の仕事へと移行していく。
「いらっしゃいませ!」
俺が制作した武器を店に売り出すまで、随分とリズにチェックされたものだったが、この営業スマイルもかなりのダメ出しが入っていた。……意外と難しいものだ、などと今でも思いながらも、とりあえずは接客していき。自分が制作した日本刀が誰かに買われていき、嬉しいような寂しいような……そんな気持ちに襲われつつも、ひとまずお客様の波は途切れた。
「おっつかれー!」
「お疲れ」
感じたような冷や汗を拭いながら、お互いに手を叩き合う。近くでイベントでも始まったのか、すっかりと客足が途絶えてしまった。あとは店員NPCに任せても大丈夫だろうと、片づけをしてからどこかに出かけようか――などと考えていると。
「リズ、ショウキさん。いるかい?」
武具店の扉が再び開かれた。反射的に「いらっしゃいませ」と言ってしまいそうになるが、その少女の顔を見て少しだけ笑みが浮かぶ。ウェーブが入った銀髪に、二刀を携えた仲間の一人。
「あらルクス、いらっしゃい」
「ああ、いて良かった。お邪魔するよ」
どことなくソワソワした様子だったが、同時に喜びを隠しきれないルクスが入店してくる。見たところその二刀や防具は、どこも損傷はしていない様子だったが。
「なにルクス、何だか嬉しそうじゃない」
「君たちも貰ったんだろう? ライブのチケットのおかげだよ」
先日のフロアボス攻略戦で共同したお礼――ということでセブンから貰った、彼女のVR空間では初めてとなるコンサート。相場価格を調べてみればその値段に戦慄したもので、かなりの人気を改めて感じたものだが。それがファン
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