暁 〜小説投稿サイト〜
「庶長子。」
庶長子
[5/5]

[9] 最初

作法通り、お着物の前を寛げ、
がたがたと震えるお体で、
扇子でお腹を召された。
ただ、余りの恐さに
首がすくんでしまい、
介錯人は失敗したのだ。
………、
肩口を切られた猫丸様が
絶叫して暴れるのを
もう一人が押さえ付けて
何とか、、首を落としたのだ。」


「むごい…。」




見物人で泣かぬ者は居なかった。

口々に見に来るのでは
無かったと、

誰もが幼い者の命が絶たれた事を
悲しんだ。







子供達が帰った後、
和尚は猫丸様の位牌に焼香し
経を上げる。




外は春の陽射しが
少し暑くも感じる頃だ。





北の大川氏と南の堀田氏が
秘かに同盟を結び
猫丸様の御実家は
南北から挟撃されて滅亡した。

堀田氏を裏切った当家は
大川氏に裏切られた。


猫丸様がお亡くなりになって
僅か一年後の事である。




猫丸様の御実家の領地は
南北に分断された。




だが、
北の大川家は太閤殿下に逆らい、
取り潰しとなった。





南の堀田家は
太閤殿下の覚えめでたく
大川氏の旧領を合わせて
大大名となったが
関ヶ原で石田方に付いて
改易となってしまった。






堀田家の、ちい姫様のその後は知らない。






今日は猫丸様の命日である。





今頃は母上様と仲睦まじく。

…甘えておられるだろうか。







春の陽射しの中、
和尚は裏山に登る。

右足を引き摺りながら。








あの頃、
猫丸様が母上様にと摘んだ花を





探す為に。










.
[9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ