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「庶長子。」
庶長子
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その可愛らしいお顔を見た時、

なぜか嫌な予感がした。




…足音が近付く。


「采女殿、ちと宜しいか?」

自分同様、猫丸様の守役として
此方まで付いて来た、
爺やの三右衛門が
小声で呼び掛ける。



「猫丸様、お早く御召し替えを、」

そう言い残して廊下に出る。



「如何した?三右衛門。」

「采女殿、、余りに様子が
おかしいとは思いませぬか?
この物々しい迎えに
違和感を覚えまする。
采女殿に密書か何か、
届いてはおりませぬのか?」


…確かにおかしい。
爺やの言う通りだ。


「まさか、
手切れになった訳では?」

「しっ!三右衛門、
滅多な事を言うで無い。」


「しかし、状況から察するに…。
猫丸様をお逃がす訳には?」

「それは無理だ、三右衛門、
既に屋敷は囲われて、、」




「お早くお願いしたい!」

迎えの者が大声を出した。







城下の御屋敷にて
堀田播磨守を大広間で待つ。


猫丸様はしっかりと
前を見詰めておられる。

幼いながらに、何かに
気付いていらっしゃるご様子だ。



静寂の中、鳥のさえずりだけが
聞こえている。




足音がして
堀田播磨守が入室した。



「猫丸か、面をあげよ。」

「はっ。」


「…そちの父とは
手切れと相成った。」


やはり!


「お前はこの意味が解るか?」


堀田播磨守が
猫丸様に問い掛ける。



「無論。…解ります。」

気丈に、、
健気にも猫丸様はそう答えた。


「ほう、流石は裏切り者の息子。
胆が座っておるわ。」

播磨守はそう言うと
猫丸様を見て微かに笑った。




「吾は幾つになった?」

「当年、十二になりました。」

「左様か。 …のう、猫丸。」

播磨守は佇まいを崩し、
猫丸様にこう語り掛ける。


「当家に仕える気は無いか?
そちは父親に捨てられたも同然。
当家の、ちい姫の婿となって
我らの身内にならぬか?」



意外な話だったが、
播磨守の狙いは判る。

猫丸様を婿に迎える事に依って
当家を分断し、
来るべき合戦において
有利な展開を、
更には当家を併合したおりには
猫丸様を担ぎ上げて据え置き、
領国として
取り込むつもりなのだろう。




猫丸様…、、、


「ありがたきお話なれど
きっぱり、御断り申す。」

「…何ゆえ?」

「手切れとなったおりに
人質が殺されるのは世の習い。
猫丸、未だ幼少
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