3部分:第三章
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第三章
二人は少しメニューを見合っていた。ウェイトレスの人を呼んだ。今度来た人は高添さんじゃなかった。それとは別の小柄な泉さんという人だった。
「チョコバナナと苺クリームですね」
「はい」
二人はその泉さんというウェイトレスさんに応えていた。
「それを御願いします」
「飲み物はウィンナーティーが二つ」
「それです」
「それで御願いします」
ただ紅茶は僕とは違っていた。ウィンナーティーだった。僕はウィンナーコーヒーは機嫌がいい時に飲むけれどウィンナーティーは飲んだことがない。だから今度はそれを飲んでみようかしらとまた二人の話を聞いていて思うのだった。
何はともあれ二人のところにクレープと紅茶が来た。また同じ組み合わせと見ていたら違っていた。今度は茶髪の人が苺クリームで垂れ目の人がチョコバナナだった。前とは逆だった。
「あのね」
茶髪の人の方から垂れ目の人に対して言ってきた。僕はクレープを食べながら何気なくを装って話を聞いている。あくまで食べているだけなのを装って。
「また相手乗り換えるなんて何なのよ」
(おや)
僕は今の言葉を聞いて意外に思った。浮気をしているのはこの人じゃなかった。そのことがまず意外だった。僕の予想が外れてしまった。
「全く。またまた浮気なんて」
「仕方ないじゃない、夏実」
けれど垂れ目の人は憮然とした顔で茶髪の人に言い返すのだった。茶髪の人の名前を読んで。とりあえず僕にも茶髪の人の名前がわかった。夏実さんというのが。顔をちらりと横目で確かめたが何となくその名前と合っている外見だった。それを心の中で思った。
「だって。彼死んだんだし」
「まあね」
何か話がさらに尋常じゃないものになっていた。僕はそれを聞いて思わずフォークとナイフの手を止めた。そのうえでまた話を聞くのだった。すぐにまた手を動かして。
「それはそうだけれど里香」
垂れ目の人の名前もわかった。里香さん、合っているというか自然に名前と顔が一緒に頭の中にインプットされた。
「それですぐに乗り換えることはないでしょ」
「だって彼凛々しいし」
どうやら今度の浮気相手は端整な美形らしい。話を聞いてこう思った。
「一途だしそこがいいのよ」
(浮気する奴が一途か)
それには何か違和感を感じた。そんなことがあるのかと。
(それはどうかな)
「けれどあれじゃない」
夏実さんが不機嫌そのものの顔で里香さんに抗議してきた。
「別にいいじゃない」
(いいじゃない筈がないだろう)
何か少し頭に来た。話を聞いていて。
(浮気なんかしたら。それも相手をとっかえひっかえは)
「相手は。リアルじゃないんだし」
(んっ!?)
今のリアルじゃないという言葉にまたフォークとナイフを止めた。そのせいでどうも食べる
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