事故物件
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思うと確かに、母親くらいの年のおばさんにマザコン扱いされ、克己心を無駄にくすぐられて契約させられた気がしないでもない。
「…3つ、ないしは4つめ。これはこの部屋に憑いてる地縛霊だ。数は少ないけど強い恨みの念を感じる。だけど、どうもおかしいんだよなぁ」
三ノ宮は揺れ続けるカーテンの方にちらりと目を向けた。
「これだけ強く恨んでいるのに、住人のお前にはそれほど興味ないらしい。…もっと言うと、全員が同じ方向を、すごい目で睨んでるんだよ」
「お、俺の方?」
「それはさっきの一瞬だけだ。…今はもう、別の方向を見ている。つまり」
彼らが、ここから視認できる方向に、恨みの対象…つまり連続殺人鬼がいる。
「―――怖ぇ!!今日一番怖いわその情報!!!」
近所にシリアルキラーがいるんでしょ!?やばくない!?
「どっち!?ねぇどっち!?」
「下の方…としか」
「だよね、ここ2階だもんね!!」
しっかりしろよ!それ一番大事な情報だからな!?
「3つ、もしくは4つと言ったろ。3つめと4つめが別の属性かもしれないと思ったのはな。どうも地縛霊の中に4〜5人、水子が混じっているんだよ。カーテンを揺らすのはそれだ。…お前、今までに彼女を孕ませたか」
「いや?ないよ?」
「もしかしたら彼女がお前に隠して堕ろしたのかも」
「いや?絶対ないよ?」
俺の今までの生涯で、彼女がないよ?そう言うと、三ノ宮は、あ、すまん…と呟いて押し黙った。…気まずい空気が流れだしたので、俺は尻ポケットのスマホを出して、少し調べ物をしてみる。
「おかしいなぁ…『大島てる』でも調べたけど、ここ別に事故物件とかじゃないんだけどな」
だよなぁ…と呟き、三ノ宮が立ち上がり、恐る恐る壁の一部にじりじりと近づいた。
「…さっきから、この壁から半身出したり引っ込めたりする人がいるんだ。お前、ちょっとこの辺叩いてみて」
「え、何で嫌だよそんな幽霊が生えてる壁叩くの」
「今日まで平気で暮らしてたくせに。俺はガチで見えてるんだよ。お前の5倍は嫌なんだよ」
仕方ないので渋々壁に近づき、後ろ手に壁を軽く叩いてみる。とすとす、と詰まった音がした。
「そっちじゃない。この辺」
三ノ宮が示す辺りを軽く叩くと、けんけん、と軽やかな音がした。
「―――これ、空洞あるな」
「お、おいこれひょっとしたら…なぁ、音が違う辺りに印つけてみろ」
三ノ宮に言われるままに壁を叩きながら、サインペンで印をつけていく。
―――やがて、俺たちと同じか少し小さいくらいの人型に、サインペンの点がちらばった。
「…うっわぁ…」
「あと何か所かあるが、どうする」
「いいよもう…一か所あれば十分だよ」
頭の芯がぐらぐらした。どうしよう、これ大家さんに言ったほうがいいよな。でもどう説明すれ
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