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俺の四畳半が最近安らげない件
事故物件
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なら近所のファミレス行くか」
「遅い。お前が怒らせたせいで玄関辺りに、一番やばいのが移動した。朝までは動けないと思え」
空気清浄機の脇に落ち着き、三ノ宮が大きく息を吐いた。
「空気がきれいだと寄ってこないとか、そういうのあるわけ?」
「気休め程度にはあるかもな」
「…ファブリーズとかで、散らせるんじゃね」
「できねぇよ」
「あ、俺ネットで見たことある!全裸で尻をリズミカルに叩きながら『びっくりするほどユートピア!びっくりするほどユートピア!』と叫ぶと、あら不思議、霊が」
「お前もう喋るな!!…空気清浄機というより、これを避けているみたいなんだけど、心当たりあるか」
押し殺した声で呟き、三ノ宮が背を丸めて座り込んだ。傍らにある段ボールの事を言っているのだろうか。
「あー、お袋からの仕送り。面倒だから開けてない」
三ノ宮は、俺に段ボールの横に来るように促した。俺たちは段ボールを挟むような形で座り込んだ。



 「…この部屋には、3つ、ないしは4つの属性の霊がいる」
「属性?」
「まず1つ。比較的穏やかな人たちだ。これはもう浮遊霊というのが近い。ただ、数が異様に多い」
「それは、このアパートの裏が大きめな墓地なのと関係があるか?」
「墓地かよ!!」
どうりで…何でそういうところ借りるんだよ…とかぶつぶつ呟きながら、奴はがっくり肩を落とした。
「…まあいい、2つめ。こっちは地縛と浮遊の中間みたいな感じだ。ただ、この場所に縛られているわけじゃなさそうなんだよな…近所に、事故多発地帯とか」
「あー、すぐ向かいの飛び込み多すぎて廃止された魔の踏切か?あれがなくなったお陰で静かになったと大家さんがお勧めしてくれたんだ」
「ねぇ、なんで借りるの!?それ聞いて何で『よし、借りよう♪』て思ったの!?」
「――騒音のせいでお安くなっていたのが、踏切がなくなってもお値段据え置き!ていわれて、あ、お得だなと。でも踏切なくなったのに柵を乗り越えて飛び込むひとが月イチペースでいて、俺もほとほと困っている」
「お前そういう場所なんていうか知ってるか!?自殺の名所っていうんだよ!?」

もう半泣きだ。霊のせいじゃなく俺のせいで。

「もうお前がすごい馬鹿なのは諦める。ここを借りると決めたとき、お袋さんは止めなかったのか」
「物件見た途端悲鳴あげられたし、家賃が安いってなら差額は出す、お願いだからやめてくれと懇願されたな」
「……そこまで言ってもらって何で借りたの!?」
「大家さんに『へぇ、そこでママ…いやいやいやお袋さんの言うこと素直に聞いちゃうんですね。あー、今の子はそういう感じなんですねうふふふ』とか言われて。ふざけんなよ、俺は無頼な大人の男なんだぞと。親の言うことなんかに惑わされねぇよと」
「怪しいなその大家!!」

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