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どっちが誰だか
3部分:第三章
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第三章

「それにしても運がよかったわね」
「ええ、そうね」
 上機嫌の二人はホテルでも笑顔だった。ホテルは奇麗なもので壁が象牙色に輝いている。赤絨毯が敷かれキャンドルの装飾も実にみらびやかなものであった。二人は今豪奢なそのホテルの廊下を歩いていた。
「このホテルにも泊まることができたし」
「いいホテルよね」
 笑顔で言い合っている。
「ビジネスホテルのつもりだったのに」
「全ては私のおかげよ」
 ここで晶子が笑顔で言った。
「私が懸賞で当てたからよ」
「感謝感謝」
「まあコンサートのチケットはあんただけれどね」
 晶子はここでその笑顔を朋子に向けてみせた。
「あんたのおかげでコンサートに行けて」
「あんたのおかげでこのホテルに泊まることができて」
「持ちつ持たれつってやつよね」
「ふふふ、そうね」
 また笑顔で言い合う二人だった。
「まあ何はともあれ後はシャワー浴びて」
「飲みに行く?」
 晶子が提案してきた。
「お酒。どう?」
「悪くないわね」
 朋子は晶子のその提案に頷いてきた。
「博多っていえば飲む場所だしね」
「ただし。身の回りには気をつけてね」
「そうね」
 名古屋の繁華街と同じでこの辺りはやはり不安なのだ。だから二人も警戒しているのである。二人は中々慎重であると言えた。よいことである。
「それじゃあシャワーを浴びてね」
「それからね」
 二人で言い合う。しかしここでふと擦れ違った女の子達が話している言葉が耳に入った。
「ねえ、聞いた?」
「何を?」
「このホテルに今藤井信太郎が泊まってるんだって」
「!?」
 擦れ違い様にそれを聞いた二人の動きが止まった。
「そういえば今日コンサートに来てたっけ」
「ええ、この福岡にね。だからみたいよ」
「ふうん」
 彼女にとっては左程ではないことだ。しかし朋子と晶子にとっては違っていた。
「そうなんだ」
「そうよ。まあどの部屋かまではわからないけれどね」
 こうした他愛のない話だった。彼女達にとっては。ところが二人にとってはそうはならないので動きを止めたまま耳に神経を集中させたのだった。
 女の子達の話が聞こえなくなった。それからやっと。二人は動きを再開させたのである。
「聞いたわね」
「ええ、聞いたわ」
 晶子が朋子の言葉に頷いた。
「しっかりとね」
「このホテルにいるみたいね」
「何号室かしら」
「多分上の方よ」
 朋子はそう推理立ててきた。
「多分だけれどね」
「何で上の方なの?」
「藤井信太郎よ」
 朋子の主張の根拠の一つはここにあった。
「藤井信太郎っていえばやっぱり」
「トップアーチストよね」
「しかも何十年もね」
 わりかしベテランというわけである。それだけスターダムにある
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