第96話
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
からの攻防はレーヴェが圧倒的でヨシュアは防御するのに精一杯だった。
「くっ……!」
レーヴェの攻撃を受けたヨシュアは双剣越しに伝わる凄まじい衝撃に表情を歪めた。
「………………………………。……ねえ、レーヴェ。1つだけ答えて欲しいんだ。どうして教授に協力してこんなことをしているのか……」
「!!」
ヨシュアが静かな表情で問いかけるとレーヴェは顔色を変えた。
「前に……カリン姉さんの復讐が目的じゃないって言ったよね。『この世に問いかけるため』……それは一体……どういう意味なの?」
「………………………………。……大したことじゃない。人という存在の可能性を試してみたくなっただけだ。」
「人の可能性……」
レーヴェの真意が理解できないヨシュアは呆けた表情をした。
「時代の流れ、国家の論理、価値観と倫理観の変化……。とにかく人という存在は大きなものに翻弄されがちだ。そして時に、その狭間に落ちて身動きの取れぬまま消えていく……。俺たちのハーメル村のように。」
「!!」
「この都市に関しても同じことだ。かつて人は、こうした天上都市で満ち足りた日々を送っていたという。だが、”大崩壊”と時を同じくして人は楽園を捨て地上へと落ち延びた。そして都市は封印され……人々はその存在を忘れてしまった。まるで都合が悪いものを忘れ去ろうとするかのようにな……」
「………………………………」
「真実というものは容易く隠蔽され、人は信じたい現実のみを受け入れる。それが人の弱さであり、限界だ。だが”輝く環”はその圧倒的な力と存在感をもって人に真実を突きつけるだろう。国家という後ろ盾を失った時、自分たちがいかに無力であるか……自分たちの便利な生活がどれだけ脆弱なものであったか……。そう……自己欺瞞によって見えなくされていた全てをな。」
「それを……それを皆に思い知らせるのがレーヴェの目的ってこと……?」
レーヴェの真意をようやく悟ったヨシュアは真剣な表情でレーヴェに問いかけた。
「そうだ。欺瞞を抱える限り、人は同じことを繰り返すだろう。第2、第3のハーメルの悲劇がこれからも起こり続けるだろう。何人ものカリンが死ぬだろう。俺は―――それを防ぐために”身喰らう蛇”に身を投じた。そのためには……修羅と化しても悔いはない。」
「………………………………。それこそ……欺瞞じゃないか。」
「…………なに?」
不敵な笑みを浮かべて答えたレーヴェだったが、ヨシュアが自分自身の決意を正面から否定した事に目を細めた。
「僕も弱い人間だから……レーヴェの言葉は胸に痛いよ。でも……人は大きなものの前で無力であるだけの存在じゃない。10年前のあの日……僕を救
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ