4部分:第四章
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同じことです」
ウェイターは静かにこう述べた。
「我々にとって犬はそうした存在なのです」
「肉としてはですね」
「そうです」
今度はデカログに答えた。
「やはり我々もどちらかというと豚や羊や犬の方を食べます」
「犬をメインにしているわけじゃないのね」
「その通りです。最近ではとりわけ食べることがなくなりました」
元々犬を食べるのは他にこれといった動物性蛋白質がない貧しい者が多かったからだ。その結果として食用の犬も生まれたのであるが。それでもやはり中国においても食べる肉のメインは犬ではないのだ。
「やはり豚や羊が」
「御免なさい、そんなことも知らずに」
「わかればいいのですよ。ただ」
「ただ?」
「一つ憶えておいて欲しいことがあります」
ここでウェイターは急に真面目な顔になるのだった。
「私達が食べることもまた文化です」
「文化ですか」
「それを野蛮だと思ってはいませんか」
それを問うのだった。
「犬を食べることが」
「それは」
「それは間違いであることも申し上げておきます。そして」
「そして」
「その間違いをもとに野蛮な行いに走るのだと考えられるならばそれは残念なことであることも申し上げておきます」
彼の言葉は二人の、特にジェーンの心に深く突き刺さるのだった。彼女はビリーを抱いたまま項垂れる。頭を強く撃たれたようにその場で項垂れるのだった。
羊料理の食材 完
2008・4・8
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