4部分:第四章
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第四章
「え、ええ」
ジェーンもまたそれに頷く。相変わらず取り乱してはいるが。
「わかりました。確か色は黒でございますね」
「そうよ」
その問いにも答える。
「黒いダックスフントなのよ。あの金髪のウェイトレスさんに紹介されて」
「金髪の、ですか」
「言葉の訛りはここので」
それも告げるのだった。ウェイターはそこまで聞いて完全に納得した顔で頷くのだった。
「わかりました。それでは」
「ビリーは。いるので」
「御安心下さい」
落ち着き払った態度と表情で二人、とりわけジェーンに対して述べる。取り乱しきった彼女に対して彼の様子が実に対象的であった。
「それでしたらすぐに」
「そうなの。すぐに」
「暫くお待ち下さい」
彼はジェーンにこう告げると一旦その場を後にした。そしてすぐに一匹の黒いダックスフントを抱いて出て来た。そのダックスフントは鼻をフンフンと鳴らして彼の顔に鼻を近付けていた。
「あっ、ビリー!」
「この犬で間違いありませんか」
「ええ、ええ」
落ち着きを取り戻し、安心しきった顔で彼に答えるのだった。
「そうよ。この犬がビリーなのよ」
「丁度今預かっているダックスフントは一匹なのですぐにわかりました」
彼はこう述べてそのビリーを二人の前に下ろした。ビリーはすぐにジェーンにまとまりつきへっへっ、と息を出して歩き回るのであった。ジェーンもデカログもそんなビリーを見てほっとした顔になっていた。
そしてまずは。デカログがウェイターに謝罪した。
「申し訳ありません」
「本当に」
ジェーンもそれに続く。
「犬がいないからつい」
「何と言えばいいか」
「実はよくあることでして」
しかしウェイターは相変わらず平然とした調子でこう言葉を返すのだった。さっきは多少困惑した顔を見せていたがもうそれは消えてしまっていた。
「よくあることですか」
「そうなのです。中国では犬を食べますね」
「ええ」
それが原因で騒いだのだから頷くしかできなかった。
「それでだったの。御免なさい」
「ですが。我々もそうそう犬を食べるばかりではないのです」
「そうなの」
「では一つ御聞きします」
ここでウェイターはジェーンに対して穏やかな声で問うのだった。
「羊とカンガルーの肉があります」
「ええ」
オーストラリアではカンガルーも食べることがある。鰐を食べる者もいる。実際のところオーストラリアも多民族国家でありしかも原住民であるアボリジニーもいる。食生活はわりかしバラエティに富んでいたりもするのだ。
「両方があった場合どちらを召し上がられますか?」
「それは勿論」
ジェーンにしろデカログにしろ答えは決まっていた。
「羊に決まってるわ」
「やっぱりそれが一番だろう」
「それと
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