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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン47 鉄砲水と分岐の英雄
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るぜ、清明!」
「う、うん!」

 2人で肩を並べて走り、かなりギリギリのところで扉の向こうに転がり込む。そこでこちらを……正確には僕の方をじっと見つめる皆の視線に気づいた。まあ、そりゃそうだよね。誰にも何も言わずに1人で乗り込んで、そのあげくがこんな何食わぬ顔してひょっこり出てきたんだ。心配、安心、そして疑念……色んな感情が渦巻いた、皆からの視線がただただ痛い。
 皆の顔を見る気に慣れなくて目線を下に下げたあたりで、ふとあることに気が付いた。ここに乗り込むはずだったのは僕を含めて全部で8人、だけどここにいるのは7人だ。まるで僕の考えを呼んだかのようなタイミングで、真っ先に明日香が口を開く。

「あまり言いたくはないけれど、清明。あなたが今朝から行方不明だったから、それを探すって言って夢想はアカデミアに残ったのよ。私達もどうするか悩んだけど、もしかしたらコブラに捕まってるのかもしれないって思って予定通りここに来たの。参ったわね、彼女に連絡が取りたいのに、ここは圏外だわ」
「そんな……!」

 例えば、今朝起きたら急に夢想がいなくなっていたとしたら、僕はここに乗り込むよりそれを探す方を優先するだろう。だけど、それと同じことが自分にも言えるだなんて思いもしなかった。
 何も言えずにただうつむいていると、空気を変えようという風にジムが1つ咳ばらいをした。

「ウホン。オーケー皆、俺たちがここに来たのはまず第一にコブラのデスデュエルをストップさせるためだ。確かに言いたいことはいろいろあるだろうが、ここは奴のホームグラウンド。いつまでもここで立ち止まっているのは大変バッドな選択だ。だからすべてを終わらせて、それからにすればいい。そうだろう、十代?」

 そう言ってジムが、皆からは見えないように十代にアイコンタクトを送る。その意味をすぐ理解した十代が、大きく頷いた。

「ああ、そうだな。行くぜ、みんな!コブラはもう、すぐそこだ!」
「……ありがと」

 思いのほか小さな声でしか言えなかったお礼の言葉は、しかしちゃんと2人の耳には届いたらしい。無言でこちらを向いて親指を立て、すぐ前に向き直って歩きだした。その後ろを翔たちが追いかけ、さらにその後ろに僕が続く。……必ず説明するから、帰ったら絶対説明するから、だから、無事にここから出よう。
 しばらく通路を歩くと、その行き止まりにはエレベーターがあった。エレベーターと言ってもよくある箱型のものではなく、ちょうどデュエルリングほどのサイズがある円形のステージのようだった。そしてその奥に立っているあの姿は、忘れもしないプロフェッサー・コブラ。十代達の顔を見てもニヤついていただけのコブラだったが、さすがに僕の顔を見ると表情が変わった。それはそうだろう、先ほどあんな地下室に放りこんだはずの人間が
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