ターン47 鉄砲水と分岐の英雄
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馬鹿力をフルに使えば、この程度なら十分に力技でどうにかできる。
「でりゃあ!……あれ?」
と、思ったのもつかの間。30センチも掘らないうちに明らかに指先から伝わってくる感触が変わり、いくら手を伸ばしてもつるつるした表面を撫でるばかりでその先が掴めなくなる。
「オブライエン、ちょっとこれ見てよ」
「今度はなんだ……鉄板か?」
「だよね」
どうも一切の継ぎ目がない、かなり巨大な鉄板がこのレンガの下には広がっているらしい。それを見たオブライエンがしばらく考えたのち、またもやポケットから何か金具をとり出した。流石にこれを素手で引きちぎるほど僕の体も凄まじいことにはなっていないので、これはこの用途不明な道具を持っているオブライエンに任せるしかないだろう。すぐにしゃがみこみ、僕の開けた穴に両手を突っ込んでの作業が始まる。
「……えっと、手伝いとか」
「いらん」
よっぽど体力がいる作業なのか、歯を食いしばるようなぶっきらぼうな返事しか返ってこない。下手に会話するのも邪魔になりそうなので、しばらくは大人しくしていることにする。手持ちぶたさなのですぐそばの壁にもたれて座っていると、今朝の寝不足とデスデュエルの疲れが今頃になって出てきたせいか、はたまた普段めったに使わないダークシグナーの力を出したせいなのか次第にまぶたが重くなってきた。すぐ隣で作業中なのに寝るなんて失礼にもほどがある、そう思ってなんとか起きていようとしてもまたすぐ睡魔が襲う。
「あうぅ……」
ごめんオブライエン。最後にその後ろ姿に手を合わせ、そのまま目を閉じる。また嫌な夢でも見るかとも思ったけど、別にそんなこともなく結局オブライエンに起こされるまで本気で爆睡していた。まあおかげで、だいぶ敗北の感触も悪夢の不安も紛らわせることができたわけだけど……逆に言うと、何か僕を眠らせようとした存在がいたわけでもなく、本気で眠くなって寝ただけだったらしい。それはそれで情けない。
「んで、どう?出られそう?」
「だから起こしたんだ。もう少しかかるがな」
「あいよー。見ーせてっと」
そうは言いつつも、場の状況を一目見てなんとなく想像はついた。先ほどの鉄板の一部が切られ、かすかに亀裂が走り向こう側から光が覗いている。そこを起点にこのまま押し広げ、どうにか穴をあけようということだろう。
あれ、だけどこれ光が見えるぐらい開いてるんならこのまま体重かけて踏み抜けばいいんじゃないだろうか。オブライエンもずいぶん長いことここに閉じ込められてたみたいだし、こんな簡単なことも思いつかないぐらい精神的に参ってきてるのかな。よしよし、最後の一押しは僕がやってあげよう。
「どりゃあああーっ!」
「あ、馬鹿……!」
オブライエンが焦った調子で制止しようと
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