外伝 憂鬱センチメンタル Part.2
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「ヴェルトール?普段はダラダラしている貴方が突然どうしたというのです?」
「まだ営業時間じゃないよー?それにこーんなに可愛いメイドさんたちに挨拶ひとつかけないなんてヒドイんじゃなーい?しかもそのカウンターはミアさんの特等席……」
「スマン!!今日の夜に迷惑料も兼ねてたっぷり払うから俺の事は少し黙っててくれ!!それと俺の次に人が来たらアーニャはその開いた窓を閉める事!!やってくれたらチップ弾むよぉ!!」
ひゅっと顔を出したヴェルトールは普段と違って余裕のない引き攣った顔で一方的にそう告げて、モグラのようにカウンターの中に引っ込んで見えなくなった。こんな珍妙な行動を取る彼を見たことがないメイドたちはしばしの間硬直するが、遅れて窓際メイド二号が外の様子に気付く。
「あー、誰かこっちに走ってきてるよー?水色の髪に四角眼鏡の美人さんだねー」
「あれー?あの人って『ヘルメス・ファミリア』の『万能者』だ!うわー有名人!分かってはいたけど大人の魅力が……ってアレ?なんか彼女もウチの店に向かってない?」
「にゃにっ!!ということはその女が店に入った途端に窓を閉めればお小遣いニャ!?ステンバーイ……ステンバーイニャー……!!」
お金に関してだけ反応の速い馬鹿ネコが目を金貨に変えて尻尾をウネウネさせ始めている中、開け放たれたままの店に件の『万能者』――アスフィが息を切らせて入り込む。その瞬間、アーニャは待ってましたと言わんばかりに窓を閉めた。
(……で、窓を閉めたからどうなるのかな?)
(さあねー……ホラ、ヴェルトールさんって偶に芸術家独特の価値観を持ちだすし、そーいうことじゃない?)
(窓が開いてるのが美しくないとか?そんな『雲の形が気に入らねぇ』みたいなこと考える人じゃないと思うけど……)
窓際族2名の会話をよそに、窓を閉められたのを確認したアスフィは悔しそうに顔を歪める。
「くっ、一歩遅かったようですね……!!窓の外から逃亡しましたか!!」
(わーお、窓を閉めた意味ちゃんとあったんだ!)
(意味ありげにあのタイミングで窓を閉めることによって、そこを通ったものと勝手に錯覚させる心理テクって訳かー……)
咄嗟の判断力が良すぎるから先入観にとらわれて普通の人間では思い浮かばないフェイントに引っかかってしまう。姑息だがそれを咄嗟に思いつくとは機転の利く男である。当の本人はアスフィからわずか数Mしか離れていない場所で蹲っているというのに、アスフィは窓から逃げたと信じて疑わない。
――なお、彼女が咄嗟にそう思ったのはひとえに彼女の主神がその手をよく使うからなのだが、そんなことはメイド達の知る所ではない。
これまた突然の有名人の来訪にメイド達はポカンとするが、当のアスフィはまるで周
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