第二章
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「その申し出はね」
「お断りされますか」
「もうおっかあのところに帰りたいから」
「ですが助けて頂いたお礼は」
「そうしたことはいいよ」
はっきりと断った太郎でした。
「このことはね」
「そうですか」
「折角だけれどね」
「ですがお礼はするものです」
亀は断られても言うのでした。
「本当に助けて頂いたので」
「どうしてもかい?」
「礼儀というものなので」
「礼儀だね」
「そこはお願いします」
「そこまで言うのなら」
亀の強い申し出を受けてでした、それで。
太郎は暫く考えてです、こう亀に答えました。
「おっかあをね」
「そのご母堂をですか」
「竜宮城に連れて行ってくれるかな」
こう申し出るのでした。
「そうしてくれるかな」
「そうですか」
「うん、僕のことはいいからね」
「それだけご母堂が大切なんですね」
「家族だよ」
だからというのです。
「だから大事に決まってるじゃないか」
「そうですか」
「そう、だからね」
それでというのです。
「どうしてもというのならね」
「ご母堂を竜宮城にですか」
「連れて行ってくれるかな」
「では太郎さんは」
「数日位なら待つよ」
こうも答えるのでした。
「お魚を釣りながらね」
「しかし私は太郎さんに助けて頂いたので」
太郎自身にお礼をしないと気が済まない、それ以上に礼儀に反するというのです。それであらためていうのでした。
「それならです」
「それなら?」
「ご母堂と太郎さんとです」
二人共というのです。
「お連れするということで」
「僕もなんだ」
「これならどうでしょうか」
「おっかあと僕を」
「はい、如何でしょうか」
「おっかあが喜んでくれるなら」
母親思いの太郎としてはです。
「いいよ」
「それなら」
「そう、それじゃあね」
「一緒に行こう」
こうお話してでした、そのうえで。
太郎はその場にお母さんを連れて来ました、もう腰が曲がりかけていてかなり歳です。ですが太郎はそのお母さんを背負ってその場に戻ってでした。
亀にです、笑顔で言いました。
「じゃあ今からね」
「はい、案内させてもらいます」
「それじゃあね」
「これから行きましょう」
こうしてでした、太郎とお母さんはです。
亀の背中に乗せてもらって海に入りました、すると。
二人は海の中でも息が出来てです、しかも普通に海の中を見ることが出来ました。その海を見てでした。
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