第四章
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「それでは」
「その服でな」
「ここにおります」
「さて、それではじゃ」
三成を抑えてからだった、それから。
秀吉は正面を向けてだ、こう言った。
「あの者をここに」
「はい、それでは」
間に控えていた小姓が応えてだ、そのうえで。
麩が開かれてだ、そこからだった。
その慶次が案内された、その彼。
茶色がかったくすんだ色の上着にだ、髷もやけに大きくして。
袴も実に派手だ、しかも裃が赤い。
その身なりの彼を見てだ、大名達はすぐに察した。
「猿か」
「太閤様が猿だからか」
「それでか」
「猿の身なりか」
「何とまあ大それたことを」
「そこまで傾くか」
こう言うのだった、そして。
前を進む彼の後ろ姿を見た大名達は余計に驚いた。何と。
「袴の尻のところは赤くか」
「そこも猿にするか」
「太閤様は猿」
「あくまで言われるか」
流石にこのことは驚いた、だが。
それでもだ、秀吉は。
その慶次が己の前に来て控えて一礼したのを見てだ、笑って言った。
「面白い服じゃな」
「はい、実は急いでです」
「ここに来るまでにか」
「仕入れたのです」
「よくそうした服があったな」
「こうした色の裃や袴はありました」
そちらはというのだ。
「しかしです」
「しかしか」
「見て頂いてよいですか」
「何と」
慶次の今の言葉にだ、大名達は流石に驚いてだった。
その尻の赤い場所を見てだ、眉を顰めさせて言った。
「その尻を見せるか」
「猿の赤い尻を」
「流石にそれはまずいだろう」
「幾ら何でも」
「しかもじゃ」
ここでだ、彼等は。
間に徒ならぬ気配を察しその気配の方を見た、するとだった。
そこに利家がいた、利家は凄まじい形相で慶次を見据えつつ何時でも飛び出せる用意をしていた。武器は持っていないが拳が握られている。
「前田殿を見よ」
「殺さないまでも何か無礼があれば」
「すぐに飛び掛かるつもりぞ」
「慶次殿は前田殿の甥」
彼等もこのことを知っている、この間に入るまでに秀吉が呼ぶ者がどういった者であるのか既に聞いているからだ。
「その慶次殿をか」
「前田殿は何かあれば」
「慶次殿が太閤様に無礼を働けば」
「その時はか」
「容赦せず殴る」
「そのおつもりか」
「例え太閤様の御前でも」
そのことを察して言うのだった。
「容赦せぬおつもりか」
「いや、恐ろしい方じゃ」
「無礼は太閤様の御前でも許さぬ」
「それもまたじゃな」
「傾くということか」
「慶次殿にしても傾いておる」
「二人揃って何処まで傾く」
二人のその傾くにだ、彼等も息を飲んだ。そして。
三成は二人を見てだ、また言った。
「前田慶次殿、おふざけが過ぎるのでは」
「い
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