第一章
[2]次話
手長足長
昔々ある村に手長と足長がいました。
手長は手が人の背丈の何倍も長くて足長は足が人の背丈の何倍も長いです。その手長と足長はとても仲がよくて。
いつも一緒にいます、そうして色々なものを取ってそれを食べていました。
そしてです、いつも二人で言うのでした。
「若し一人だけなら」
「わし等はどうなっていただろうな」
「わしはただ手が長いだけで」
「わしは足が長いだけでな」
「何も出来ないな」
「そうだよな」
こう話すのでした、ですが。
他の村人達はです、二人にこう言うのでした。
「御前さん達は一人一人でも大丈夫じゃないのか?」
「普通にやっていけるだろう」
「その手と足の長さなら」
「ものを簡単に取れるし」
「どんな場所でも一跨ぎじゃないか」
「それでどうして一人だけだと駄目なんだ」
「何も出来ないんだ」
「わしは手が長いだけだよ」
手長が笑って答えました。
「ただそれだけだよ」
「それだけなのかい?」
「手が長いだけ」
「そうなのか」
「ただ遠くのものが手に入るだけで」
それでというのです。
「何も出来ないよ」
「そうなのか?」
「それが凄いと思うが」
「御前さんのその手の長さ自体が」
「けれどそれだけか」
「遠くのものを取れるだけか」
「背がないんだ」
手長は言うのでした。
「背は皆と変わらないだろう」
「ああ、確かにな」
「御前さん手は長いけれどな」
「背は普通だな」
「わし等と変わらないな」
「何処もな」
「そうだろう、手は皆と普通に使えてもな」
かなり長い手でもです、手長はその手で普通の暮らしもしています。ものを食べたり身体を洗ったりすることにも普通に使っています。
しかしです、あくまでこう言うのでした。
「背は変わらないんだ、だからな」
「それでか」
「御前さんは手が長いだけ」
「それだけか」
「本当に」
「そうさ、わしはそれだけだよ」
「わしもだよ」
今度は足長が言うのでした。
「足が長いだけだよ」
「それだけか」
「御前さんもか」
「ただ足が長いだけ」
「それだけか」
「足が長い分速く動けて高い場所も見られるさ」
足の分だけ背丈があるからです。
「それは出来るさ、けれどな」
「それだけか」
「御前さんの場合も」
「背はあっても」
「それだけか」
「足が長いだけか」
「そうさ、わしだってそうさ」
足長もというのです。
「足が長いだけだよ」
「じゃあ二人でか」
「本当によくなるのか」
「御前さん達は」
「二人揃ってか」
「そうさ、わし等はな」
「そういうものなんだよ」
今度は二人で言うのでした。
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