第一章
[2]次話
姉の結婚
堂上良は友人達と居酒屋でしみじみとだ、ビールを飲みつつ言った。
「もう少しでな」
「ああ、御前のお姉さんな」
「結婚するんだな」
「結婚式か」
「それだな」
「そうなんだよ、姉ちゃんがな」
しみじみとして言うのだった。
「結婚するんだな」
「ただの結婚じゃないよな」
「ちょっと違うよな」
「そこはな」
「ああ、俺が中学校入った時にな」
良は太く濃い眉に短いパーマが印象的な精悍な顔で言った。
「親父もお袋も事故で死んでな」
「丁度高校を卒業したばかりの姉さんがな」
「御前の面倒見てたんだよな」
「ずっとな」
「ああ、折角入った大学も辞めてな」
そしてというのだ。
「就職してな」
「御前の面倒見てくれたんだよな」
「ずっと」
「そうなんだよ」
まさにというのだ。
「生活費も学費もな」
「全部な」
「お姉さんが稼いでくれたんだよな」
「そうだったんだよな」
「それにな」
良は真剣な面持ちで話していった、ビールを飲む手を止めて。
「俺を高校まで行かせてくれてな」
「それで大学に行く学費もな」
「出してくれたんだよな」
「ああ、俺は大学はな」
そちらはと言うのだった。
「行かないつもりだったんだよ」
「成績よかったけれどな、御前」
「それでもだったよな」
「大学に行かずに就職するつもりだったな」
「高校を卒業してから」
「そのつもりだったよ」
まさにというのだ。
「本当にな、けれどな」
「お姉さんがな」
「行きたいのなら行けって言ってくれたんだよな」
「学費のことは心配するなって言って」
「そうしてだったな」
「ああ」
その通りという返事だった。
「俺は大学に行くことにしたんだよ」
「そうしてだよな」
「公立の大学に進んでな」
「勉強続けたんだよな」
「学費が安いからな」
良は真剣な面持ちでこのことも言った。
「大学に行かせてもらってもな、姉ちゃんに」
「お姉さんに多く負担をかけさせたくなくてな」
「それでだったよな」
「学費の安い公立の大学に進んだよな」
「奨学金も受けて」
「姉ちゃんのお陰だったからな」
良は真剣な面持ちのまま言った。
「だからな」
「お金のことでこれ以上負担をかけさせたくない」
「その為にだよな」
「そうしたんだったな、御前も」
「あえて」
「ああ、そうして勉強してな」
大学でも真面目に、というのだ。
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