第六章
[8]前話
「僕なんかをそう思っていたんだ」
「あの娘はあの娘でな」
「そうだったんだ」
「ああ、とにかく相手をそうそうな」
「高嶺の花とか思わないことなんだ」
「そうなんだよ」
まさにというのだ。
「そうしたらかえって相手もびっくりする、そしてな」
「相手もそう思ってるかも知れない」
「そういうことだよ、わかってくれたな」
「よくね」
これがハンスの返事だった。
「今回のことでわかったよ」
「ああ、それにな」
「それに?」
「エーデルワイスって言ったろ」
ヒルダのことをというのだ。
「御前あの娘のことを」
「うん、今もそう思ってるよ」
「エーデルワイスは確かに奇麗だけれどな」
「それでもなんだ」
「案外ポピュラーな花だろ」
「そうかな」
「ああ、我が国だとな」
スイスではというのだ。
「そうした花だろ」
「だからなんだ」
「そこまで高く思うな」
マルティンはハンスに言った。
「相手をな」
「そういうものなんだ」
「そうしたらかえっておかしくなるからな」
こう言うのだった。
「御前もヒルダちゃんもそうじゃなかったけれどな」
「おかしくもなるんだ」
「相手をしっかりと見るんだ」
そのありのままの姿をというのだ。
「これからはそうしろよ」
「わかったよ、じゃあね」
「ヒルダちゃんをな」
「お互いにそうしていくよ」
その交際の中でとだ、ハンスはマルティンの言葉に頷いた。そうして実際にだ、ヒルダと交際していく中でだ。
ありのままの彼女を見た、見れば時々失敗もして慌てたりもする。ごく普通の女の子だった。
趣味も少女的だ、それでヒルダ自身にこう言ったのだった。
「ヒルダちゃんが余計に好きになったよ」
「どうしてなの?」
「本当のヒルダちゃんを知れたから」
交際する前は知らなかったが、だ。
「だからね」
「私のことが余計になのね」
「うん、好きになったよ」
「それは私もよ」
ヒルダもだ、ハンスに微笑んで話した。
「ハンス君のことがわかったわ」
「それでなんだ」
「思っていた以上にずっと優しくて気遣いをしてくれるから」
だからというのだ。
「好きになったわ」
「そうなんだ」
「これまで以上にね」
「お互いをよく知る」
ハンスはここでマルティンの言葉を思い出して言った。無闇に高く見て自分では無理だ駄目だと思うよりも。
「それが大事だね」
「そうよね」
ヒルダもハンスのその言葉に笑顔で頷く、二人で楽しいデートの時間を過ごしながらだ。そうしたことを話したのだった。
高嶺の花
2015・11・16
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