第四章
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「それでもね」
「やるんだな」
「告白をね」
「じゃあもうクレバスに飛び込むつもりでいけ」
山の裂け目にというのだ、これもスイス名物だ。
「いいな」
「そうするよ」
ハンスは確かな声で頷いた、そしてだった。
彼はヒルダのところに向かった、そうして。
彼女にだ、緊張しながら言った。
「今度映画館行かない?」
「駅前の?」
「うん、実はチケット二枚手に入ってね」
言葉を必死に出していくのだった。
「それでよかったらね」
「私でいいの?」
これがヒルダの返事だった。
「私なんかで」
「えっ!?」
「だから。私なんかでいいの?」
ヒルダはまさかという顔でハンスに問い返すのだった。自分の言葉を受けて目を丸くさせて驚いた顔になった彼に。
「本当に」
「いや、それって」
「だから。ハンスってね」
「僕は?」
「他にもいい娘いるでしょ」
「それどういうこと?」
「だから頭がよくて教会とかでボランティアもして」
こうしたことをだ、ヒルダは本人に話していくのだった。
「毎日運動もしてて皆から人気があるので」
「あの、それって」
「だからね、ハンス皆から凄いって言われてるのよ」
「そうだったんだ」
「それでなのよ」
戸惑いを隠せない顔でだ、ヒルダは言っていくのだった。
「私なんかがって」
「いや、僕こそ」
「ハンスこそ?」
「ヒルダには釣り合わないって思って」
それでとだ、ハンスもヒルダに素直に話した。
「努力してたんだけれど」
「そうだったの」
「それでそう言われたら」
「けれど本当にね」
驚きの表情には嘘は一切なかった、それはハンスが見てもわかることだった。
「私なんかでいいの?」
「ヒルダじゃなければ嫌だよ」
ハンスは言った、映画館に誘うということがどういうことかわかっているだけに。デートの申し込みであるそれを受けること即ち告白だからだ。
「僕は」
「そうなの」
「それでだけれど」
「本当に私でいいのよね」
まだこう言うヒルダだった。
「いや、本当に」
「お願い、僕はヒルダの為に努力してきたつもりだから」
「それじゃあ」
「うん、それじゃあね」
「映画館一緒にね」
行こうとだ、ヒルダはここでやっと微笑みになって応えた。
「行きましょう」
「それじゃあね」
ハンスもにこりと笑って応えた、こうして二人はこのデートの後で本格的な交際をはじめることになった。その彼にだ。
友人達は暖かい笑顔でだ、こう言ったのだった。学校の帰り道で。
「よかったな」
「ヒルダちゃんと交際出来て」
「何か相手もびっくりしていたみたいだけれどな」
「自分でいいのかって」
「ハンスと付き合ってって」
「そう言われてびっくりしたよ」
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