第一章
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高嶺の花
エーデルワイスは高原に咲く花だ、その美しさは高原という場所にあることからも来るものだとも言われている。
そのエーデルワイスについてだ、スイスのある町で時計工場を営んでいる家の息子である高校生ハンス=シュベッツェンは学校帰りの通学路で友人達に言うのだった。
「僕エーデルワイスが好きでね」
「それでそのエーデルワイスこそが」
「あの娘だっていうんだな」
「そう言うんだな」
その彼にだ、周りが笑って言うのが常でそれは今もだった。
「まさに高原の花」
「高嶺の花」
「そう言うんだな」
「そうだよ、僕なんてあれじゃない」
ここでだ、ハンスは自分のことを話した。
「この通りの外見だよ」
「背は高いけれど太っていて」
「鼻は丸くて顔も丸い」
「彫もあまりない」
至って普通の顔だ、青い目と金色の髪の毛が目立つにしても。顔立ちも穏やかだが野暮ったいのは否めない。
「勉強は普通、スポーツは苦手」
「趣味は読書だね」
「音楽も好きだけれど」
「自分ではしないしね」
「うん、けれどヒルダはね」
彼女の想い人であるヒルデガルト=ホーエンバッハはというと。
「凄く可愛いよね」
「可愛いっていうか美人か」
「そんな感じだよな」
「そう、目はアイスブルーで透き通っていて」
クールな目鼻立ちでだ。
「銀髪がショートヘアでね」
「背は高くてすらりとしてて」
「成績はよくてスポーツも得意」
「バンドをやっててヴォーカル」
「女の子だけれど格好いいよな」
「僕にとってヒルダはね」
まさにというのだ。
「エーデルワイスだよ」
「つまり高嶺の花」
「そう言うんだな」
「うん、だから想っていても」
それでもというのだ。
「想うだけだよ」
「それだけだっていうんだな」
「見ているだけで」
「それしか出来ない」
「いつもそう言っててな」
「今もなんだな」
「そうなんだ」
こう言うのだった、実際に今も。
「僕なんかじゃね」
「そう言うけれどな」
ハンスの小学校からの友人マルティン=ホフマンが言った。黒髪に黒い瞳がアジア系を思わせる雰囲気を出している。
「御前あの娘もな」
「人間だっていうんだね」
「そうだよ、俺達と同じな」
まさにというのだ。
「それだろ」
「けれど同じ人間でもね」
「レベルが違うっていうんだな」
「僕はジャガイモでね」
自分をこう例えるのだった。
「あの娘はエーデルワイスじゃない」
「同じ植物だな」
「全然違うよ、ジャガイモなんて」
それこそというのだ。
「土の中にある何でもないものじゃない」
「それでエーデルワイスはか」
「高原に咲いているね」
「高嶺の花だな」
「そうだよ、全然違
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