暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
暗躍はディナーの後で
[9/9]

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エフェクトを添える。

出てきたのは、首元も覆うタイプのセーターもその上に羽織るベストも長いスカートも靴も黒一色で統一した妙齢の美女だ。乳白色の肌の色から、辛うじて闇妖精(インプ)とは分かるが、逆に言うとそれくらいしかわからない。徹底的に内面が見えないお姉さんだった。

現実時間ではもう真夜中に近いのだが、時間がずれているALOではちょうど朝日が昇るところだった。

世界樹の巨大な枝葉の向こうから零れてくる陽光に背伸びをし、インプのお姉さんはずり落ちそうだったメガネを直す。これもやっぱり黒縁だった。

「ん、ん〜っ。さっむいわねー、もう冬かー。こないだまで春だった気がするんだけどなぁ」

微妙に年寄り臭いことを言いながら、肩をゴキゴキする妙齢の美女(笑)

何となくその場のノリで、ラジオ体操っぽい動きを店の軒先でおっぱじめたお姉さんは、

「ん?」

玄関脇に設置されているポストから、羊皮紙の端っこがはみ出していることに気付いた。

メガネのリムを上げ直し、お姉さんはポストから紙を引っこ抜く。正直、ゲーム内でのポストなどフレンドメールの概念がある以上、装飾品以上の意味合いはない。だが、その上で書面に記しているのはそのマイナーさを逆手にとった手法だ。ホロキーボードで文字を打ち込むメールと違い、モード変更で直接文字や絵を書き込める関係上、サーバにログが残りにくいという側面もある。

ぺらりと紙面を広げ、そこに綴られたきっちりとしたフォントを眼で追っていたお姉さんは――――にんまりと笑った。

見た目の神秘的で厭世的な雰囲気とは違い、ひどく俗世にまみれた人懐っこい笑みだった。

「ふんふん……、なるほどなるほど。あっちもあっちで大分面白そうな感じに仕上がっちゃってるみたいねー」

鼻唄を口ずさむほどに上機嫌になったお姉さんは、その場でくるくる回転し始めた。どうやらよほど面白いことでも書いてあったのか。

一通り回って満足したのか、勝手に疲れたお姉さんは前髪をかき上げて引っ張り出した額をこりこりしながら宙空を仰ぐ。

「さーて、忙しくなるわよ」

そう言って、《兎轉舎》女店主、高原イヨはどこか宣言するように呟いた。










予定調和は終わる。

《鬼才》の思惑なんてどうでもいい。

《魔神》の大仰な計画など知ったことか。

そんな対立軸がまた一つ。

どうしようもない世界に、新たな産声を上げようとしていた。










最も強い者が生き残る訳ではなく、最も賢い者が生き延びる訳でもない。

唯一生き残るのは、変化できるものである。

――――チャールズ・ダーウィン
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