暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
暗躍はディナーの後で
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と思った瞬間、まだ彼らに見せたことのない――――彼らの常識の度外にある最先端を出す。心理戦で言えば結構えげつない手ではあるが有効には違いがないだろう。

だが、それもいつまでもは続かない。

「あまり……世界を舐めるなよ」

「それは経験者の判断か?」

「……かもしれない。だが――――」

ふっ、と『声』は笑ったようだった。

「わぁーってるよ、別に舐めちゃいねぇ。……ンなクソッタレな運命なんてモン作りやがったヤツ相手に舐めプする度胸なんてねぇっつの」

「……………………」

その声は、字面だけ見たら軽かったろう。

だが、その一つ一つ、単語の隙間に捻じ込むようにこめられた殺気に、女性は一瞬、本当に一瞬黙り込んだ。

黙らされた。

不敗。否、そもそも負けという概念すら知らなかった彼が唯一敗北を――――これ以上ない《屈服》をさせられたモノ。

世界。

苦々しいなんてものじゃない。憎々しいでもまだ足りないだろう。

《鬼才》と呼ばれるこの男が、地を這い泥を啜り、それでも届かなかったモノがあった。

この言葉は、そう――――ただの負け惜しみだ。

だから――――

「あぁ……そうだな」

端末に声を吐きかけ、女性は穏やかに言葉を紡ぐ。

「……そろそろ切るぞ。この極寒下ではバッテリーがもたん」

「ああ」

通信を切った女性はまず、端末にぶら下げていた大量のストラップを一つ一つ丁寧に外し、端末本体をそれまで暖を取るために燃やしていたたき火の中に放り込んだ。

じゃらじゃらと非常にやかましいキーホルダーをひとまずポケットに入れてから、女性は頭上を見上げる。

ノルウェーはかなりの高緯度地域。降るような星空で、オーロラが美しい光のカーテンを広げていた。その裾野は遠く、地平線の彼方まで続いているような錯覚に陥る。

だが、そんな写真家が涎を垂らしそうな光景を見ても、女性の心には波紋の一つも立てることができなかった。

何分そうしていただろうか。

誰もいない、オーロラのかかるノルウェーの空の下、女性は静かに口を開く。

いつも言えない、その一言を。

ひっそりと

「……だから、止めなきゃいけないんだよ」

言った。










ALO、イグドラシル・シティ。

大陸中央にそびえる世界樹上空に広がる枝葉に支えられる形で浮かぶ天空都市の片隅に、胡散臭い一つの店があった。

訪れた(数少ない)客の大半は雑貨屋というが、店主によれば骨董品店(アンティークショップ)なのだとか。

見事な達筆で書かれた看板の下、すりガラス張りの扉がゆっくりと開いた。カランコロン、とパブや喫茶店にあるような鈴の音が軽やかなサウンド
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