暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
暗躍はディナーの後で
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暗殺とは必ずしも狙撃といった直接的手段とは限らない。毒殺などは、遅効性の毒物を使われたら犯人の特定は困難だ。そもそも実行犯を処分したくらいで止まったら苦労はしない。

だから彼は、究極的に強引な手段を実行した。

つまり、殺されるべき自己を複製したのだ。いかな世界の闇が仕向けた選りすぐりの暗殺者でも、目標(ターゲット)が複数、しかもそのどれもが偽物などではお手上げだ。

ともあれ、そんな技術をキラキラした声質で自慢してくる(本人は隠しているつもりらしい)『声』に呆れたように女性は小さくため息をついた。

「なるほどな。……で、ノルウェー側はどこまで掴んでいたんだ?」

『衛星墜落と《ソノブイ》について、……あとはカモフラのためにバラ撒いてた《凍土招来(ニヴル・スレプリカ)》について、かな。ま、エリック(あのジジィ)は捨て駒扱いだった可能性もあるし、ノルウェー全体がどこまで把握してるかは不透明だな』

「意外だな。《Gコード》くらいは触れられると思っていたが」

『まぁこんなもんだろ。どっちみちノルウェーの役割は《ソノブイ》打ち上げで八割方終わってる。変異層圏(ミラーレイヤー)の完成はオマケみたいなもんだ。せいぜい、ありもしない戦略兵器(ニヴル・スレプリカ)とやらに踊っててもらおう』

そうか、と相槌を打ちながら、女性は暗視ゴーグルを開けっ放しにしていた窓から車内に放り込み、代わりに懐から常用のメガネを取り出した。

「だが今回の一件で、ノルウェーはお前を許さないぞ。これにかこつけて、米中露も介入してくるだろう」

介入で済んだらまだいい。

ただでさえアメリカは艦載AIに対してキューバの対艦兵器の件がある。敵意剥き出しでちょっかいを出してくるだろう。

それに中露――――とくにロシアはことさら酷い。技術と資源でリードを奪っていた優位性の内、技術面の軍事バランスを不透明化され、さらには他国には散々技術提供して自国には音沙汰さえないのだ。相当はらわたが煮えくり返っているに違いない。

今回の一件は、そんな彼らの怒りを公然と振るえる理由づけになる可能性がある。

テロ首謀者のレッテルでも張り付け、表世界で堂々と探し回ることだろう。

完全に居場所を失う行為。

だが男の声に後悔の感情は一片も含まれていなかった。

その理由を、その訳を知っている女性の身からすれば、そっと目を伏せる以外には何もできない。

『勝手にさせときゃいンだよ。どーせ連中は派手な手出しなんてできないしな』

散発的な軍事介入の目的はここにある。

米中露の世界三カ国が特殊(コマンド)部隊などを使って本格的に手出ししてこない理由は、究極的なところこちら側の手札が完全に見え切っていないせいだ。手のひらを全て見た
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