暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
暗躍はディナーの後で
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日本と違って、欧州の外食は基本的に時間を長くかける。

食前酒から始まってデザートがやって来るまで、最終的に二時間、三時間と経ってしまうことも珍しくない。

したがって、食事中は静かにしなさい、なんてのはこちらの文化圏では通用しない。食べるのがメインなのかお喋りがメインなのかが分からない程度なのが、彼らの食事の楽しみ方である。

夜の七時。

この辺りでは別に珍しくもないオーロラに覆われたノルウェーの首都、オスロの街は緯度で言えば極寒のロシアとタメを張れる位置だが、明るい街灯の下に歩く人通りは多い。それもこれも、沿岸部に流れる暖流が温暖な気候を運んできているからだろう。

―――だからこそ、危ういんだよなぁ。ソレがいつまでも続くとは限らんだろーに。

クルクルと回したフォークをサーモンの塊に突き刺しながら、小日向相馬は適当に思った。

品のいい間接照明に浮かぶ店内は、パブやバーなどといった安っぽさは一切感じられない。レストランの中でも王族御用達とか五つ星とか、そんな前置詞がくっついていそうな豪華な内装だった。おそらくは大理石かなにかであろうテーブルの下に敷かれた毛足の長い絨毯にうっかりジュースでも零そうものなら、クリーニング代だけで一生終える人もいるかもしれない。

だが当然そんなところに来る客も洗練されており、離れた席に座る者達はいずれも良く言えば上層階級、悪く言えば成金趣味な雰囲気を醸し出していた。

加えて言えば当然彼らの来ている物もドレスだったりスーツだったりするのだが、小日向相馬はそこら辺にまったく頓着していない。いつも通りの、使い処のよくわからない真っ黒な白衣を着用していた。

傍目からすると異様な光景。

しかしなぜか、それすらも総体的に小日向相馬という存在を仕上げ、また景色に溶け込んでもいた。

異質な空気を常に身に纏う少年のような青年はそこで初めて窓から目を離し、己の対面を見る。

そこには空の椅子。

相手はまだ来ていない。

小日向相馬は軽くため息を吐き出した。

「ったく……。そりゃ呼び出したのはこっちだし、待たなきゃいけねぇのはわかるけどよ。それでもやっぱメンドくせぇモンはメンドくせぇよなー」

青年の声は喧噪に隠れる。

これは別に特殊な機器を用いている訳ではない。

要は何事も見方の問題だ。

人間が聞き耳を立てる際、雑踏の中から特定の声を拾って聞き取るものだ。逆に言えば、そこさえ意識してさえいれば、どんな声も雑音の中へと隠れてしまう。周囲で響いている喧噪という名の総体的な音の振幅や音質などに、意図的に自前の声幅を合わせていれば聞き耳などできはしない。

―――ま、指向性集音マイクとか持ち出されたらさすがに無理だけど。

そこまで小日向相馬が
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