第12話『独りじゃない』
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騒然とする1ー1のクラス。誰もが目の前の者の姿に驚きを隠せない。
そしてその前に立つ者はメソメソと涙を流していた。
「え、えっと…」
先生が困惑した表情を見せる。それを見る限り、先生も病気の詳細は知らなかったようだ。
声を掛けようにも、目の前に起こった出来事が突飛過ぎて誰もが考えを張り巡らせた。
「うっ…ぐすっ…」
いまだに泣き止む様子はない柊君。彼には一体どういう秘密があるのだろうか。
というか秘密と言っても、もう既に一部は頭の上で露になっているのだが。
「柊…君…」
俺が小さいながらも声を絞りだして彼を呼ぶ。
するとその声に気づいたのか、彼はこちらをじっくりと見据えてきた。
その目は怒りと悲しみが混ざったように見えた。
「やっぱり…僕は…」
柊君はうつむき、そう呟いた。
彼の頭上ではションボリとする耳が姿を見せていた。
そうか。彼の引き籠りの根元はアレだったのか。
アレのせいで、イジメられるなどとその身に余る哀しみを受けたんだ。
学校に来たのは、アレを何とか隠し通すのが条件と考えるべきだ。でないと彼が自宅から出ることはないと言い切れる。
俺と先生は、誰も君を変に扱わないと柊君に言った。
俺はそれは事実だと信じてるし、クラスの皆も信じてる。
だけど、アレが晒された以上、この後に彼がどうなるか、どんな扱いを受けるかなんて俺にはわからない。
でもやらなきゃいけないことは、彼をこのクラスに引き留めること。クラスの皆と仲良くさせること。
だから彼をどうにかフォローせねばいけない。
大方、彼の説明をクラスの皆に…といった所か。
よし。俺が柊君を守らないと!
「ひいら──」
「可愛い…!」
俺が一言言おうとした瞬間に、誰かの唐突な声で遮断される。
驚いた俺がその言葉の真意を探ろうとすると、次々と言葉が1ー1で飛び交った。
「可愛い!」
「何あれヤバい!」
「あれってケモ耳とか言うやつじゃない?!」
「ホントに小動物みたい!」
「柊君、可愛い!!!」
「「は??」」
俺や男子の誰もが開いた口が塞がらなかった。
何が起こったのかと察する前にクラスは賑やかになり、もはやお祭り状態となった。
時間を掛け、ようやく理解した俺は何とも言えない表情を表に出す。
今教室で起こったのは、女子たちの柊君に対する称賛の嵐だった。主にプラスの方向で…。
その後も女子たちは収まることなく、むしろヒートアップしていった。
「ねぇねぇその耳触って良い?」
「モフモフしてそう!」
「ピクッってして可愛い〜!」
「てか柊君が可愛い!」
「家で飼いたいくらいかも!」
い
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