第11話『空白の一席』
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いるからである。だが先生も仕事を途中で切り上げなければならない以上、少し遅れるそうだ。
待っている間、大地たちから「何してんだ?」と声を掛けられたが、適当にはぐらかしておいた。本当のことを言うと、何か面倒そうだったし。
「おーい!」
「先生!」
誰かが俺を呼んだ。
声のした方を見ると、山本先生が職員玄関から手を振りながらこちらに向かってきているところだった。
服装はスーツのままだが、どことなく表情が和らいでいる。
「いやー、待たせたね」
「大丈夫です」
端から見ればデートの待ち合わせの時の会話に聴こえるかもしれないが、そんなことは決してない。
…ということはさておき、俺は先生の車の助手席に乗せてもらった。
柊君の家はそこまで遠くはないらしいのだが、歩いていくには時間が掛かるそうだ。
「晴登君、今回の目的は・・・」
「柊君の説得、ですよね」
先生の言葉を先取りして俺が言う。
何か任務みたいでワクワクしてきたな。もちろん、目指すは“任務完了”だけどね。
「それじゃあ行くよ。シートベルトはしたかな?」
「もちろんです!」
任務開始だ!
*
「着いたよ」
「はい」
俺と先生は車を降りた。
目の前に見えたのはマンションだった。ぱっと見、5階以上はある。
先生は迷わず中に入っていった。
オートロックとか何やらがあると思うのだが・・・まぁ良いか。
その後は階段を上がることもなく、着いたのは1階廊下の一番奥、『107』と書かれた扉の前で先生は止まった。
「ここだよ」
「…はい」
俺はゆっくりインターホンに指を伸ばす。
…正直何を話そうかとかまとまってないし、そもそも出てくれるかわからない。だけどその時は外からでも言ってやろう。「学校は楽しい」と。
ピンポーン
静かに音が響いた。家の中に居るのなら聴こえるはずだ。
さぁどう出るのか…?
「…何も聴こえないですね」
「…物音一つしませんね」
うん、まぁ予想通りだ。
物音がしない辺り、きっと宅急便だろうと郵便だろうと出ないな、柊君は。
ドアスコープからこちらを見ることさえしないようだ。
「もう一回押しますか?」
「やむを得ませんね」
ピンポーン
「…やっぱりダメでしたか」
「俺がやってやります」
あまり玄関前に長居はしたくない。
伝えることだけ伝えてとっとと帰らねば。
俺は大きく息を吸った。
そして思ってることをこの口から・・・・
「何の用ですか?」
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