第11話『空白の一席』
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入学からもう1ヶ月が経とうとしていた。
一応クラスの皆とは馴染むこともでき、学校生活は順調である。
学校の構図はまだ全ては覚えきれてないが、それでも最初よりはわかってきた。
だが、そんな俺には1つ気になることがあった。
「柊君・・・は今日も欠席か」
健康観察の点呼で、先生のため息混じりの寂しそうな声が聴こえる。これを聞いた時、皆の顔は少しだけ暗くなる。
そう、これが俺の悩み。出席番号27番の“柊”という人が、学校に来ないということだ。
いわゆる不登校。理由は恐らく『過去にイジメられ、学校が怖い』、『病気を他人に見られたくない』などというような、身体的、精神的、心理的なことが多いと聞く。
確かにこんなことなら、俺も学校には行きたくない。
ずっと家に居た方がマシである。
だがどうしても、柊君には学校に来てもらいたい。
でないと、俺の気が晴れないのだ。
ただの自己満かもしれない。
でも俺は彼と一度も顔を合わせたことがないのだ。
彼は中学生になってから一度として学校には来ていないと思うし、入学式でも部活動紹介でも、1ー1の27番に誰かがいることは無かった。
なので俺は、彼の身の上話も何も知らない。
だからこそ、彼とは話がしたい。
俺の『まだクラスメートと馴染めてない感』を無くすために。コミュ障を治すために中学では頑張ってんだから!
俺は山本先生に話を訊くことにした。
プライバシーだとか言われればそれまでだが、それでもクラスメートは気になるというものだ。ましてや1ヶ月もいないし。
俺は健康観察が終わり、更には朝の会が終わったのを見計らい、山本先生の元へ向かった。
「先生!」
教室から出ようとしてた先生を、大きな声で引き留める。先生は振り返り、こちらを見た。
「何ですか、三浦君?」
「あの…先生に訊きたいことがあります」
内容が内容なだけに俺の声のトーンは落ちる。
先生も重要な話だと思ったのか、向こうに行こうとする姿勢を止め、俺を見据えてきた。
「柊君のことなんですが…」
濁しても無駄だと思った俺は、内容はストレートに伝える。だから先生にも言いたいことは伝わっただろう。
「『どうして学校に来ないのか』かね?」
「はい」
先生は穏やかな顔を崩さずに言った。
それを見ると、あまり深刻過ぎる理由ではないのだろうかと考えてしまった。
だが先生は衝撃の一言を俺に告げた。
「柊君はね…病気なんだ」
「……」
病気…。そっちの線で来たか。
イジメの方であれば精神的な問題だから、解決できないことも無い。
だが病気ともなると、例えどんなに学校に行きたかろう
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