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第一章
酒がない!
ロシアでだ。驚くべき法案が成立した。してしまったと言った方がいいだろうか。
その法案は禁酒法である。内容はというと。
ロシアにおいてアルコール度が〇・一パーセントでもある酒は一切飲んではならないし輸入も製造も販売も一切禁止である。この法案が成立したのだ。
成立させた大統領は言うのだった。
「酒は億害の元である」
こう言ってなのだった。その法案を強引に成立させたのである。
だがそれを聞いてだ。ロシア人達が愕然となった。
「酒が飲めないだと!?」
「本当か、それは!?」
「嘘じゃないのか!?」
まずは誰もがそのことを疑った。信じられなかった。
寒いロシアである。酒がないとどうなるかだ。
「寒くて凍えるぞ」
「ウォッカなしで冬のモスクワを生きろというのか」
「死ぬぞ、絶対に」
「そうだ、有り得ない」
こう言い合うのだった。
「サンクトペテルブルグなんか北極圏だぞ」
「ロシアは息が凍るんだぞ」
「ガソリンすら凍るんだ」
「シベリアは地獄だぞ」
だからこそ流刑地になったのだ。ロシアは究極の流刑地を持っていることでも有名だ。敵国の捕虜だけでなく政治犯や凶悪犯も送られた歴史がある。
「それなのに酒がないだと」
「ウォッカだけじゃないぞ」
しかもなのだった。まだあった。
「ワインも飲めない」
「ビールもだ」
「とにかく酒は一切駄目だと」
「どうやって生きればいいんだ」
そしてだった。こんな意見も出ていた。
「ロシア人は酒がないと動けないんだぞ」
「そうだ、黒パンにウォッカだ」
「その二つがあれがロシア人は生きていける」
それと家と仕事だ。ロシア人の無欲さは少なくともアメリカ人や中国人の一部と比べれば恐ろしいまでのものがある。それだけで満足するのだ。
「しかしどちらかがないとだ」
「死ぬんだ」
「仕事をやる気がなくなる」
それは何故かというとだ。
「仕事の後のウォッカだ」
「仕事の前の景気付けのウォッカだ」
「仕事中に身体を温めるウォッカだ」
「沈んだ気持ちを和ませるウォッカだ」
とにかくウォッカだった。
「それがないと生きられないんだぞ」
「それでどうして禁酒だ」
「少し洒落た料理にワインもないのか」
こちらにはウォッカ程関心を向けないのだった。
「喉が渇いたらその時は軽くビールを飲みたいんだがな」
「それもなくなるんだぞ」
「酒が売れなくなると」
今度は酒の販売業者からの声だった。
「どうやって生活すればいいんだ」
「そうだそうだ、酒を売れないのか」
「どうすればいいんだ」
「それだったら生きられないぞ」
「パンが食えなくなるぞ」
彼等にとってはとり
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