ちゃんと見てると、彼女は言った
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ら、もう。
『私は、助けてって言った奴を助けずに見捨てたりしないのに』
囁くような声は、どことなく寂しさを感じさせた。青い瞳が、何かを訴えている。
けれど、その寂しさはアルカに突き放された事に対して向けられたものではない気がした。突き放された程度で彼女はこうはならない事くらいは、もうなんとなく解る。
『言ったでしょう。アンタが上辺だけで笑ったって、アンタを本当に見てる奴には通じないって』
泣きそうな訳ではなかった。そうなると解っていた事を思い知らされて、それでもそう思わずにはいられないような、真っ直ぐにはいかない色を声に滲ませていた。
『捨てられたくないなら捨てないって約束してあげる。理由がなくて私に頼れないなら幾らだって理由を作ってやるし、関係が必要ならアンタが望むだけの関係になってやるわ』
突きつけられる言葉を聞きながら、アルカの頭は疑問でいっぱいだった。
どうして彼女はここまで言うのか。初対面で、嫌いだと言った相手で、勝手に感情をぶつけられて、そのくせ勝手なプライドで遠ざけようとされている。そうなるかも解らない想像に怯えているだけの自分に、決して優しくない少女は何をしてくれるというのだろう。
『…何なんだよ、本当に』
『結局、言いたい事は1つだけど』
何度目になるか解らない言葉を吐き出せば、青髪の少女は悪戯っぽく笑みを浮かべる。
そのたった1つの言葉の為に彼を怒らせ、傷つけ、苦さを思い出させ、ちっぽけなプライドすら持ち出させた彼女は、それらの行動を全て償うかのように、幾分かの明るさを持ってこう言った。
『私はアンタをちゃんと見てる。―――笑ってないアンタも、全然悪くないわ』
(要は、オレが笑う以外も出来るようになるまでサポートする、みたいな助けじゃなかった訳で。つーかあれを助けといっていいものか……いやまあ、それで昔よりは何倍もマシになったし、ティア様様なんだけどさ)
今なら解る。彼女が言いたかったのは「アンタが何を思ってても私には筒抜けで、隠すなんて無駄だと知れ。無駄なんだから隠すのを止めろ」という事なのだ。かなり横暴な言い方だが、結局のところこういう意味である、とアルカは思っている。
(隠すの止めろとかさー、それが主流だったオレに言う事じゃねえよなマジで。しかも解りにくいから何言ってんだコイツ状態だったし。今だから解るけど……あれ、もしかしてつまりは「私が解ってやるから大丈夫だ」って意味、だったりして)
考えて、即座に否定する。相手はあのティアだ。そんな優しさなんてないという訳じゃないけれど、かといってそんな意味を持たせるとも思えない。
(あの時連れ出してくれたのも、きっと通じてないのが解ったからだろうし。まあ普通はあ
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