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Element Magic Trinity
ちゃんと見てると、彼女は言った
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わないけど』
『別に…助けてほしい事なんてねえよ』
『本当に?』
『本当に』

つい意地を張ってしまう。
本当は、アルカにだって解っているのだ。今ここですべきなのは意地を貫き通す事ではない事ぐらい。彼女に縋るのが正解ではないのも解っていて、それでも本当に言いたい事は言えないまま。
多分、彼女は解ろうとしてくれている。初対面の奴から溜め込んでいたものを正面からぶつけられて、それを受け止める必要もなければ受け止めてもらえる関係性でもないのに、思うままに吐き捨てた言葉の1つ1つを、さも当然のように受け止めてくれている。
けれど、だからって素直に手を取るなんて出来ない。初対面だからとかまだお互いをちゃんと知らないからだとかではなく、アルカのちっぽけなプライドからだった。

『あれだけ助けてって叫んだのに』
『そんなの一言も言ってねえ』
『どうしたらいいんだって喚いたくせに』
『お前にだって解んねえだろ、張本人が解ってない事なのに』
『第三者でこそ解る事もあるでしょうに』

何を言っても返される。必要ないなら捨てろと言ったのは彼女なのに、捨てさせる気を全く感じさせないのは何故だろう。

『……赤の他人だ』

だから、アルカも徹底的に突き放す事にした。
心のどこかで伸ばされた手を掴もうと指先に触れた気がしたが、無理矢理抑え込む。望む事を押さえつけるのは、何より大得意だった。

『お前にオレを助ける理由はねえし、オレだって助けられる理由がない』

ただ思うがままに声に出す。

『助けてくれる確証だってないし、そんな不確かなものに頼りたくねえし』

言いながら、内心に広がる苦さが懐かしかった。
朝起きて、いつも通りが来ると思って、けれどいつも通りになんてならなかったあの日。紙切れ1枚を残して消えた家族と、捨てられた事に対する胸の重い痛み。
何で今更、と思って、ふと納得する。それは誰かに陰口を叩かれた時と同じ苦しさだった。

『そんな口約束信じられないし』

面倒事は御免だった。皆が笑っていればそれでよかった。
けれど―――それと同じくらい、自分が感情を露わにする事で誰かが離れて行くのが怖かったのだ。いつも笑っているはずの自分が怒って、それで周りから誰も彼もいなくなってしまったら。
その程度で終わるよう付き合いなら止めてしまえ、と他人は言うのだろう。けれどアルカは、人を失う事に敏感だった。周囲に誰もいない事が何より恐ろしかった。

『オレの“助けて”に、お前が振り回される必要も、理由も、関係も…何にも、ねえだろ』

だから。
そんな一時の同情で、そこから来る優しさで、こっちを本気にさせないでほしい。
いつか離れて行くのが解っていて、それに縋って捨てられるのはもう嫌だから。

――――だか
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