ちゃんと見てると、彼女は言った
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たい奴だと思っているけれど、それは思っているだけに過ぎないのだから。
その冷たさが上辺だけかもしれないなんて、微塵も考えていなかった。
『確かにアンタの顔は嫌いよ、見ていて不快だわ。序でに言えば直せないって事に対して可哀想だとは思う。だけど、それが直らなくてアンタが苦しんでるって知った今でも、私はさっき言った事を取り下げない。だって不快なものは不快だもの』
冷たく突き放す高い声。滑らかに尖って突き刺さる言葉の1つ1つを、自分でも驚くくらい静かに受け止められていた。
それは頭が冷え切っていて冷静になれているからかもしれないし、投げつけられる声の中に冷たさ以外の何かを見つけたからかもしれなかった。
『けど、アンタはそれで止まらないじゃない』
ふと、声が柔らかくなった気がした。
導かれるように下ろした右腕、開いた視界には青髪の少女。不機嫌そうな表情だった顔には、挑発的でこちらを小馬鹿にしたようで、それでも慈しむような色を滲ませた微笑みが浮かんでいる。
『ギルドで私が“私に関わらないならそのままで構わない”って言った時、アンタは私と関わらずに過ごすって選択をしなかった。本当ならそれが1番今まで通りのはずで、アンタからすれば何も変えなくていい最も楽な道なのに、アンタはそれを選ばなかった。それどころか私に苛立って見せて、ここまで怒鳴って泣いて。――――よくもまあ、こんなに豊かな感情を笑うだけで隠していられたわね?』
『は…何、言って』
『アンタは出来ないんじゃなくて選んでないだけなんじゃないの?怒るか笑うかで笑う方選んで、それを続けてきたから出来ないって思い込んでるだけで。それか人より怒るのに時間がかかるか…案外、その程度かもしれないじゃない』
いや、オレむしろ人より短気だと思うんだけど。
そう頭に浮かんで口に出そうとして、結局口は開くだけだった。ぽかんと口を開くアルカにくすくすと笑みを零して、少女は秘密だとでもいうように自分の唇に人差し指を当てる。
『もう1度言うわ。私はアンタの顔が嫌い…だけど、アンタって人間そのものは嫌いじゃない。別にそれは誰かの為に何かが出来るからだとか、そんな御綺麗な理由からじゃないわよ?結局アンタは自分の言いたい事を真っ直ぐに言うから、その辺りに好感が持てるってだけ』
『……あんだけ嫌い嫌い言ったくせに』
『顔は、ね。……私、やりたい事を出来ないのが何より嫌いだから。で、言いたい事言えないのも、言いたい事を言わない奴も大体嫌い』
『我が儘すぎだろ…どこのお嬢様だよお前』
その時僅かに彼女の表情が陰った気がしたが、見間違いだろうと思い込む。それだけ小さくて一瞬の変化だったのだ。
『…だから、そのアンタが何かを望むなら、少しくらい力を貸してやってもいいわ。必要ないと捨てても構
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