ちゃんと見てると、彼女は言った
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う、と言い返されるオチが、まだ10分も経っていない付き合いだが予想出来た。
好きで笑っている訳じゃない。ただトラブルを回避したくて、誰かが怒鳴る声を聞きたくなくて、編み出した解決策。誰かが怒った後のどうしようもない空気が嫌で、嫌な事があると解っているならそれを避ければいいと思いついた結果。
(怒りたい時だってあったし、怒鳴りたいとだって思ったし)
気づけばそれが癖になって、そうなれば人間関係は良好だった。アイツは怒らないから、と近所の同年代に何をされても、「止めろよ」と冗談交じりにも取れる声で返すだけだった。
多少の悪戯は許してくれる奴だから、とそれが徐々にエスカレートしていっても、僅かな苛立ちさえ顔に出さなかった。許すなんて、アルカは1度だって口にした事はないのに。
(けど、もう癖で。頑張っても抜けなくて。どうしようもねえから、オレだって苦しいのに)
面倒事を避けたかった、怒鳴る気力が無駄だから―――そんな理由でもあったけれど、根本は単純に、皆で笑っていられればそれでよかったのだ。楽しければそれでいい、その為なら多少の犠牲を払うとしても仕方ないと、アルカはずっと思っていた。
ずっと楽しいのが理想だけれど、そんな事がある訳ない。ある訳ないものをあるものにするのだから、何かしらの犠牲は必要なのだ。
(今日会ったばっかりのお前に、何が解るんだよ……!)
――――そんな彼の手は、気づけば青髪の少女に引かれていた。
暮れかけの太陽が水面を煌めかせる。
掴まれた手を振り払うように離されて、辺りを見回す。それでようやくここが河川敷で、知らないうちに彼女に連れ出されていたのだと知った。
『っ…何だよ、突然連れ出しやがって』
どうにも崩れなかった敬語がいとも簡単に崩れていたが、それに気づく余裕はない。
対面する少女は変わらず真っ直ぐすぎるくらいにこちらを見ていて、負けじとアルカも彼女を睨む。
『つーか、お前こそ何なの。何で初対面のくせにずけずけ入ってくんの?オレの事なんて1ミリだって知らないくせに、何がへらへら笑うなだよ。不快だとか嫌いだとか、何にも知らねえのに言ってくんな!』
ふつふつと静かに煮えていたものが、一気に爆発したようだった。急激に体温が上がっていくような感覚、僅かに揺らめくのは陽炎だろうか。
力任せに彼女の華奢な肩を掴む。胸倉を掴み上げるのは止めた方がいい、と冷静に判断する自分がどこかにいた。小さく見開かれた青い目がすぐに退屈そうなそれに戻るのが、尚更油を注ぐ。
『オレだって好んでへらへらしてねえよ、止められるなら止めたいんだよ!赤の他人のお前からすればとっとと止めりゃいいって話なんだろうがな、そんなに上手くいくなら最初から悩んでねえんだ!直したいって思
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