ちゃんと見てると、彼女は言った
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って顔を逸らす。
「べ…別に、だからって好きでもないからな!?私はお前の笑った顔が嫌いだってだけ!何かあるといつも無理して笑って、その感じがよく解んねえけどイライラするってだけで……」
無性に恥ずかしくなって捲し立てる。勢いのまま最後まで言い切ろうとして、ふと彼の反応が気になって目を向けた。ころころ変わる表情が今どんな色をしているのかが気になった、ただそれだけの理由だと、誰に対してのものか解らない言い訳を用意して。
「…え……」
そして、ミラは見た。
真正面から、見てしまった。
「……そっか」
そう呟いた声は、無理に返事を用意したように聞こえた。何か返さないと妙に思われるから、と引っ張り出して、結局違和感を植え付けたそれ。
アルカは、どれとも断言出来ない感情を滲ませた表情をしていた。笑っているようで泣き出しそうで、ここまでなら泣き笑いといえるのに今にも怒り出しそうでもあって。糸で無理矢理吊り上げたようにどうにか笑みの形を作る口角は、笑っているはずなのに空っぽだった。感情が顔に出ているのだから無表情とは呼べないのだろうけど、中身がないのだから無表情としか呼べないとも言える、そんな顔。
「ごめんな、苛つかせて」
それだけ言った。それ以外は何も言わないで、何事もなかったかのように頬杖を付いて窓を外を眺める。
何でそんな事言うんだよ、と責めるような口調じゃなかった。悪かった、と申し訳なさそうに言う訳でもなかった。ただ穏やかで、起伏のない声。責めも咎めもしない、何を思って吐き出した言葉なのかが読めない声色。
「……」
「……」
また、沈黙。
いくらか苦じゃなくなった静寂の中で、つられるように窓の外に目を向けたミラは思う。
あの声はまるで、何もかもを諦めてしまったようだった、と。
「上手く行ってるかなあ、ミラ姉とアルカ」
「行ってないとしたら帰って来たと同時にぶん殴ってやるわ」
「暴力はダメだよー」
テーブルの上の皿は2つとも既に空。今日も今日とて喧しいギルドの端のテーブルを陣取る少女2人―――ミラの妹リサーナと、アルカの相談相手であるティアは、今頃列車を降りたか依頼先に到着したかであろう2人を思い浮かべた。
仲が悪いというよりはアルカが一方的に嫌われているともいえるこの状態をどうにかしたい、と提案したのはティアだが、乗り気なのはリサーナの方だ。確かに彼女はアルカに懐いているから、姉とも仲良くしてほしいと思ったとして不思議ではない。
けれど、ここまで珍しくも協力体制でやって来たティアには解っている。だから、何気なしに問いかけた。
「ねえ、リサーナ」
「何?」
「アンタ、気づいてたんでしょう。アイツがミラに惚れてるって」
「うん。とい
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