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歌集「春雪花」
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 偽りて

  沈みし春の

   雨雲は

 ただ侘びぬれて

    雨ぞ降らせり



 毎日同じ…自分を偽り生きるしかない…。
 春だからと浮かれることもなく…ただ虚しく歩むだけ…。

 彼を恋しく想い、侘しさに耐える私に…雨雲は春の柔らかな陽射しを覆い隠して雨を降らせる…。

 人とは何と馬鹿馬鹿しい生き物だと言わんばかりに…。


 あぁ、私も…そう思う…。



 雲に隠れ

  見えぬも在りし

   夜半の月

 求め虚しも

    想いけるなり



 真夜中…空は雲に覆われて月もなく、肌寒い風が気儘に吹いてゆく…。

 確かに…月明かりはそこにはないが、雲の上には出ているはずだ…。
 ただ、見えないだけなのだ…。

 そんな月を求めて空を見上げても、虚しいだけだと分かっている…。

 それはまるで…この国に生きる彼に会えないことと同じ…。

 遠すぎることもまた…同じなのだ…。


 それでも尚、彼を想い続けるだけ…。





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