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第一章
酒と悪魔
魔界でだ。悪魔達が話をしていた。黒い身体に蝙蝠の翼、高く曲がった鼻に険のある目、頭に曲がった角、先が三角になった尻尾とまさに悪魔の姿である。彼等はテーブルに座って話をしていた。
「人間だな」
「ああ、奴等だな」
「あの連中だよ」
彼等は人間について話をしていた。
「あの連中をどうして堕落させるか」
「それが問題だよな」
「何が一番堕落させやすい?」
「異性か?それとも金か?」
「権力か?」
「何が一番だ?」
話すのはこのことだった。何が人間を一番堕落させるか。そのことを話しているのだった。
「本当にな」
「何がいいかだよな」
「問題はそれだが」
「煙草はどうだ?」
ここで一人が言った。
「あれはどうだ」
「ああ、あれはやった奴がいたぞ」
「何か妙な感じになって終わったからな」
「止めた方がいいぞ」
「それはな」
「そうか。じゃあ止めるか」
煙草は止めになった。それでさらに話していく。
「金もな」
「オーソドックスだな」
「今一つ面白くないな」
「ああ、権力もな」
「これまでやってわかってるしな」
「今日一つ面白くないぞ」
彼等は楽しみや喜びを求めているのだ。金や権力についても既にやっていてどうなるかわかっていた。それでこう言い合うのだった。
「飽きたな」
「ああ、何時の時代でもどうなるかは同じだしな」
「それにこっちの世界もな」
魔界の話にもなるのだった。彼等の世界だ。
「普通に金と権力で人間の世界と同じになってるしな」
「魔王様達もそれぞれ権力闘争と蓄財に余念がないしな」
「俺達だってそうだしな」
「ああ、だから同じだろ」
こう話がされてだった。この二つも止めになった。
そしてさらに話をしていく。次はだ。
「女、それか男な」
「同性愛もいいな」
「これはどうだ?」
「堕落させるのに一番か?」
「いや、そうとも限らないぞ」
これも否定されるのだった。
「愛に目覚めてそこから猛烈に頑張る奴も多いしな」
「ああ、愛こそ全てとか言ってな」
「堕落どころか正義とかに目覚めてな」
「実に酷いことになるしな」
彼等から見ればそうなのだった。悪魔だからだ。
「これも駄目だな」
「ああ、駄目だ」
「同性愛でもな」
「それでもそっちに目覚める奴いるからな」
同性愛でもだ。愛は愛だからだ。
「愛情ってやつは人間の感情の中で一番面倒だからな」
「これは一番駄目だな」
「かえってよくないからな」
「却下だな」
「ああ、そうしような」
これで愛情も駄目になった。しかしであった。
彼等も諦めない。次に出すものは。一人が言った。
「酒はどうだ?」
「酒か?」
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