9部分:第九章
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第九章
「お姉ちゃん結局半分しかお掃除してないのよ」
「あれ、そうなの?」
「そうだったの?」
「そうよ。しかも見える場所の方が圧倒的に多いじゃない」
このことにも気付いたのだった。
「何なのよ、それって」
「何言ってるのよ。大切なこと教えてもらったじゃない」
「お姉さんに」
ところが二人は言うのだった。相変わらず優贔屓である。
「本当に立派だわ」
「ああした方になりたいわね」
「なりたいと思ってもなれないから」
実に突き放した言葉であった。
「あんなとんでもない人には」
「そう言ってるの宇宙であんただけじゃない」
「そうそう」
しかし二人は言うのだった。能天気さは不滅だった。
「あんな聖人君子を捕まえてよ」
「神様みたいな人を」
「神様は神様でも邪神よ」
未来の言うことこそ真実であるがまさにカサンドラであった。自分以外の誰もがそのことを信じずまさかと否定するだけであった。
「お姉ちゃんはね」
「で、その優さんに教えてもらったことだけれど」
「ちゃんと実践してんじゃない、ちゃんと」
「ねえ」
二人で顔を見合わせて話をするのはいつもの通りだった。
「ちゃんとね」
「それであれこれ不平言ってもよ」
「言いたくもなるわよ」
大きな目を顰めさせての言葉である。
「本当にね」
「まあまあ。そんなこと言っても」
「ちゃんとしできてるからいいじゃない」
二人はまた未来に告げる。
「とにかくよ。ちゃっちゃってお掃除して」
「終わらせましょう」
「ええ」
何はともあれ掃除まで身に着けた未来だった。こうした姉とのやり取りを続けているうちに。未来は何時しか主婦になっていた。しかも何でもできるスーパーカリスマ主婦にだ。
「ほら、見なさい」
その成長した未来に対して優が言ってきた。その態度は相変わらず傲岸不遜である。この時もエマニエル夫人の椅子にふんぞり返り子供を抱いている。
「あんた、ちゃんとなれたでしょ」
「お姉ちゃんにしごかれたからね」
「何でもしないと駄目なのよ」
そしてこうも言うのだった。
「家事もお料理もね」
「それはわかるけれど」
だからといって不満に思わない筈もなかった。
「お姉ちゃんのせいで毎回毎回仕事やらされて」
「それが仕込みだったのよ」
また話す優だった。平然と。
「わかる?」
「意地悪じゃなくて?」
「私があんたに意地悪したことある?」
「横浜ベイスターズが負けた数以上に」
憮然として言い返した言葉であった。
「多いじゃない」
「心外ね。私みたいな聖者はいないわよ」
「文学部の教授の人で河邑さんっているわよね」
「ああ、あの人ね」
気付いたように応えるのだった。
「あの人がどうしたの?」
「髪の毛全部
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