8部分:第八章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第八章
「何時でも言ってきて。トルコ料理だけじゃなくて何でも作れるから」
「・・・・・・うん」
こうして彼女にも彼氏ができた。何と姉に無理矢理作らされたトルコ料理で彼氏までできたのである。思えば信じられないことであった。
そうして優は優でそのトルコ料理により恋人との仲を発展させ遂には結婚となった。結婚しても素顔は見せず夫やその家族の前では猫を被り続けている。これがまた。
「あんた、掃除まだ?」
「今やってるわよ」
泣きそうな顔で姉に応えている。窓を必死に拭いている。
「もうすぐ終わるから」
「早くしなさい」
自分はあのエマニエル夫人の椅子にふんぞり返りながら命令をするだけだった。
「ほらそこ、汚れてるわよ」
「わかってるから」
必死にガラスを拭きながら述べる。
「それに毎日やってるじゃない」
「毎日やるのは当たり前よ」
こんなことも言うのだった。
「お掃除なんてのはね」
「けれどお姉ちゃん全然してないじゃない」
「甘いわね」
妹の泣きそうな突込みにあえて返す姉だった。
「私は毎日しているのよ」
「嘘、生まれてからそんなの見たことないわ」
この言葉にこそこの姉妹の関係が見事なまでに出ていた。
「お姉ちゃんがお掃除してるところなんて」
「じゃあ言うけれど」
姉はその妹に対して言うのだった。
「私の部屋は誰が掃除していたのかしら」
「私じゃない」
速攻で突っ込みを入れる未来だった。
「私でしょ?それは」
「そうだったっけ」
「そうだったっけじゃなくてそうだったじゃない」
顔を河豚のように膨らませたうえで抗議する。すると大きな目がさらに目立つ。
「実際。子供の頃から」
「甘いわね」
だが姉は強かった。有害なまでに。
「あんたは見える場所を掃除していただけなのよ」
「見える場所って!?」
「見えない場所を掃除する」
そして言うのだった。
「それが本当のお掃除よ。わかる?」
「それはわかってるけれど」
「わかってないからそんなことをするのよ」
姉の言葉は続く。
「わかる?掃除は見えないとことまでして掃除なのよ」
「じゃあ具体的にはどういうところなのよ」
「見なさい」
ここで優は自分の側にあった冷蔵庫を開けてみせる。するとその中は見事に整理整頓され細かい場所まで丁寧に拭かれていた。
「これ。どう?」
「えっ、冷蔵庫って」
「あんたこんな場所まで掃除したことないでしょ」
得意げに笑いながら妹に告げるのだった。
「そんなの。全然ね」
「まさかと思ったけれど」
「そのまさかをあえてするのが秘訣よ」
冷蔵庫を閉めてそのうえでまた妹に語る。
「わかったわね。掃除も」
「わかったわ。そういうものなの」
「何事にも陰と陽があるもの
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ